破断直後のEt cetera
「大路!」
後ろから声が聞こえて、反射的に振り返る。
向こうから十二村部長が走ってくるのが見えた。
喉を上下させつつも、部長に向かって冷め切った顔で言い放つ。
「なんですか? なにか用ですか?」
「…………」
何も言わない部長に痺れを切らし、足を踏み出す。
でもすぐに腕をつかまれた。
「ちょっとなんなんですか? 話があるならさっさと」
「あぁ? テメェごときが俺から逃げられると思うなよ?」
なに――――
(は? 『てめぇ』? 何語??)
それにしても、いつもの十二村部長とは思えない重低音を響かせた声だ。
まるで不良、いや裏の世界に住む住人のような――――
「いいご身分だな大路未怜。俺の人生散々狂わせといてよ。」
「はい!?」
「てめぇがオージスに貢献できるとでも本気で思ってんのか? あ"? 大路がどれだけ無能な人間か、俺が骨の髄まで分からせてやる。」
何この人。しんっじられない。
いきなり本性現してきたと思ったら私を『無能』だって?!
私は渾身の一撃の言葉を彼に浴びせた。
「部長、どこぞの教授秘書との熱い一夜はいかがでしたか? さぞかし夜の方は『有能』だったことででしょうね〜。」
鼻で笑いながらその一撃を決めた。
すると部長が唇の端を舐めて、口角を片方だけ上げる。
期待を裏切る部長の表情に、ビクリと肩が上がる。
(な、ななななななんなの。何で全く怯まないのこの人⋯⋯。)
私の会心の一撃がまるで効いていない。それどころか密かに笑っている。
少しだけ不気味に感じた。とても好きだった人に対する感情とは思えない。
その表情が何を意味しているのか、その時の私はまだ知らない。