破断直後のEt cetera

「なっ」

 
 そして私が拒絶する間もなく、壁際に追い込まれる。

部長の高身長が私を覆う。

 これが噂にいう、壁ドンってやつ? 文芸部で出回っていた少女漫画の一コマを、社会人になって経験するとは思わなかった。


 冬場だし、非常階段まで空調は届かないはずなのに、壁につける自分の背中が熱い。
 
 顔が赤くなる前に、急いでこの場から離れないと。
 
 
「……あの。私、自分の引継書を作らないといけないので、」

「なぜ何も言わずに帰った?」

「は、」

「金曜日。なんで俺がシャワー浴びてる隙に勝手に帰ったんだと言ったんだ。」

 
 鋭利な刃物のようにギラギラと睨みつける瞳が、私を追い詰める。でも私も負けてはいられない。

この人は、私を“褒める”どころか、平気で社内で婚約破棄を公言できるような人間だ。
 

「部長が言ったんでしょう? 『めんどくせえ』って。めんどくさいなら私は帰るしかないじゃないですか!」

「は? まさか、それだけで帰ったのか?」

「ハア? 『それだけ』って……。ほんっと信じられない!」


 負けじと鋭い眼光で睨み返してやる。
   
 こっちがどれだけあんたの一言で悩んだと思っているのか。この宇宙人にはまるで理解できないらしい。 
 
            


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