破断直後のEt cetera
課長から簡単な業務説明が終わり、他の秘書課にいる社員を紹介してもらった。
グローバル部の秘書課には、男性一人と女性一人いて、前任者が辞めてからの約1ヶ月間、たった二人で秘書業務を回していたらしい。
そりゃあ1日も早く誰かに来てもらいたかったことだろう。デスクに積まれた用紙の多さに居た堪れなくなる。
(はは。私、ここで頑張れるかな。。)
挨拶を済ませて、営業本部の秘書課に戻る。エレベーターが1階で止まっているため、非常階段から下りることにした。
まさか十二村部長が、楢崎課長に婚約解消のことを伝えていたなんて。
ちょっと意外だ。もっと秘密主義なタイプかと思っていた。
13階まで下りたところで、自分の右脚が膝からゆっくりと一段を踏みしめる。トクン、と胸の音が鼓膜に響く。
なぜか十二村部長が壁にもたれて立っているのだ。
腕を組み、訝しげな顔で、階段を下りる私を見上げた。こんなところで、なにをしているのか。
まさか、私を待っていたんじゃ――
「おい。会社辞めるんじゃなかったのか?」
その言い草に、思わずカチンときてしまう。
(信じられない! 何なのこの人……。)
それが、異動を言い渡された部下に対する第一声ですか。わざわざ嫌味言うために私を待っていたのかと思うと、益々部長の神経を疑う。
「ええ、その予定でしたけどね! 赤堀部長の熱烈なお誘いに根負けしたため、辞職は取り消そうかと思います。」
淡々と部長の顔を見て告げると、部長が一瞬、視線を反らした。
「違うな。あれは赤堀部長よりも楢崎だ。」
「え?」
「いや、なんでもない。」
あまりにも嫌そうにため息を吐くため、これ以上この人と喋っていても意味がないと、無視して前を横切ろうとする。
でも部長の前を通りかかった瞬間、咄嗟に腕を掴まれた。