破断直後のEt cetera

 矛盾だらけの自分に嫌気を感じていると、スリッパの音を鳴らしお母さんがリビングに入ってきた。

 ドカッと私の隣に座り、梅昆布茶をすする私を覗き込んで言った。  
  
「十二村製薬のグローバル部に異動だなんて凄いじゃない! 足引っ張らないように頑張りなさいね。」

「もうお母さん〜! それ言うのフラグだよ〜! グローバル部なんて私が一番驚いているんだから!」


 十二村製薬を退職するつもりだったというのに、なぜ異動になったのか。突飛なシフトチェンジに、両親には順を追って説明した。
 

 私には4才上の兄がいる。両親は、将来、兄にオージスを継がせることに必死で、小さい頃から兄に構うことが多かった。

 私がこうしてなんでも両親に説明するのは、自分のことを認めてもらいたいからなのだと思う。期待はされずとも、妹も妹なりに頑張っているんですよ、と。

 ファザコンだとかマザコンだとか、そういったものとはまた違う気がする。
 

 初めて赤堀部長や楢崎課長に仕事を認められたため、グローバル部への異動を決めたことを両親には伝えた。

 2人とも納得はしてくれたものの、十二村詩太との婚約解消後に、彼が継ぐ会社で働き続けるには、肩身が狭いのではないかと心配していた。
    
 いやむしろ、私からすれば、婚約者だった時から十分肩身が狭かったように思う。
  
 
「あ! 見て未怜! 『Wo`tis』の特集やるよ!」

「ふうん。」

「録画しないと!」 
 
「アーカイブ配信があるでしょ。」
 
「配信とリアルタイムの録画は違うんだって〜。」


 興味のないふりをする私を余所に、お母さんがリモコンを画面に向けて録画をする。
  
 テレビ画面には、6人組の韓国アイドル、『Wo`tis(ウォーティス)』のライブ映像が流れている。

 ファンに向け、彼ら一人一人が手を振る姿を見逃すまいと画面に集中する。  

 すると、最後に詩太さん似のシウ君が映った。詩太とそっくりな顔立ちのシウ君が、キュッと口角を上げて温和な笑顔で『사랑해요 (サランヘヨ)』と囁いている。

 心の中でギャーギャー騒ぐ私に対し、お母さんは生声で黄色い声援を上げている。





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