破断直後のEt cetera
「キャーー!! いつ見てもビジュアル最強〜!!」
「お母さん、ほんと美形集団に目がないよね。」
「当たり前でしょ?! イケメンを拝めるだけで毎日の栄養補給になるんだから! 『明日も頑張ろう』って思えるじゃない?!」
画面の向こうでは、大勢の観衆に囲まれる6人が、大きくて手を上げて叫んでいる。
『모두로부터의 발렌타인 초콜렛, 기대하고 있군요!(皆からのバレンタインチョコ、期待してるね!)』
それを聞いて、咄嗟にスマホをタップしてカレンダーを見入る。
(ああ、そっか。もうすぐバレンタインか。)
去年はすでに、詩太さんにあげるつもりはなく、意地になって今まで作ったことのないザッハトルテに挑戦してみた。
ザッハトルテに塗るアプリコットジャムから手作りしたため、お父さんには『感動するほど美味しい』と褒めてくれたのだ。あれは、今までの中でも相当苦労した最高傑作だった。
今年は異動の忙しさに、とても作っている暇はないかもしれない。
「ねえ未怜、このシウ君って子、ちょっと十二村さんの息子さんに似てない?」
婚約解消となってまだ間もないこの時期に、平気でお母さんが私の肩を叩いて言った。
梅昆布茶を吹き出しそうになりながらも、慌てて否定する。
「そ、そんなわけないじゃん! いっつも仏頂面で憎まれ口しか叩かない男、こんな爽やかなシウ君とは似ても似つかないって!」
「あら、いつの間に詩太君と仲良しになったの?」
「なってないってば!」
キッチンからは小松さんの柔らかい笑い声が聞こえてくる。
気まずくなった私は自分の部屋に戻った。
2月1日、本日より私はこのグローバル部に配属される。
私のデスクには、事前に持ってきておいた筆記具などの持ち物がすでに並んでいる。
椅子には片付けきれていない紙袋が2つ。退職の際に使うはずだった紙袋が、まさか異動の引っ越しに役立つとは思わなかった。
「おはようございます。今日からよろしくお願いします。」
「おはようございます。今日からよろしくお願いしますね。と、早速なんだけど、」
グローバル部の女性秘書、天王寺さんに、パソコン画面を見ながら説明される。すぐにボストンの総合病院から送られてきた論文を日本語に翻訳してほしいと言われた。
「ろ、論文ですか……。」
「大丈夫、翻訳ソフトを使いながら確認してもらえればいいから! 分からなかったらすぐに私に聞いてね。」
椅子の紙袋を椅子の下にしまい、すぐに翻訳作業に取りかかる。