破断直後のEt cetera
口にした瞬間、胸の内に秘めていた想いが溢れ出そうになり、じんわりと自分の頬が熱くなるのを感じた。
初めは、中学の文芸部に置かれていた原作の英国ファンタジー本から英語を学んだ。
韓国語はシウ君をきっかけに、ドラマやライブを見ているうちに、自分でも発音を復唱するようになっていた。
私に二言はない。たゆまぬ研鑽を積む日々には、必ず背景に十二村詩太という人物がいたのだ。
必ずこの人に比肩しようと、心に決めて。
「大路、」
部長の指が顎に添えられて、瞬間的に唇を重ねられる。
キスの余韻に、シナモンを伴う甘さを感じた。
「な、」
「それは、楢崎じゃないよな?」
「じゃ、ないです。」
「『きっか』の可能性は? 」
「だから。なんで吉香が出てくるんです? それ、部長が楢崎課長に恋してるっていうのと同じ意味ですよ?」
「恋はしてないが嫉妬はした。」
ここまで追い詰められて、途端に怖くなる。
ずっとずっと、長年伝えられなかった深すぎる想い。『好き』だなんて一言では片付けられない気がして、部長から視線を外しかけた。
「俺を見ろ、大路。」
大きな手の温もりが、私の頬を包む。
誤魔化しようのない自分の泳ぎっぱなしの視線に、部長の紫がかった瞳が私の中に潜り込もうとする。
「あ、あのっ、」
部長の片手が私の太腿に置かれる。
優しく指が食い込んで、どこかとも分からない部分に熱が集まっていく。
「俺は、浅ましい人間だ。無理やりキスして陥落でもしなきゃ、好きなやつは手に入らないと思っていた。」
「……え?」
「でもお前は、所構わずズケズケ物言う女だし、かと言ってお嬢だから高飛車と思いきや、そうじゃない。高坂を先輩として立てる謙虚さも持っている。」
「褒めるなら一文目から褒めてほしかったです。」
「つまり、お前には社会性もあるって意味だ。」
優しく掴まれた太腿と、ただ頬を包み込む手はどこまでも柔らかい。
今は無理に『陥落』するわけじゃないのか。
きっととっくに応えは出ているはずなのに、貪欲な私は、問い詰めなければ気がすまなかった。