【書籍化】素直になれない雪乙女は眠れる竜騎士に甘くとかされる【コミカライズシーモア先行連載中】
 その美しい文字を書く名前の人は誰なのだろうか。そんな気持ちはアリスの心に、ぽつんと突然落ちて波紋を広げた。

 そしてその機会は皮肉にも、隣国と戦っていた時にあった。長い戦いの中、戦闘能力が高く前線に配置される竜騎士は基本出ずっぱりだ。だが、戦場からすぐに移動出来る手段を持つ竜騎士は、交代で帰って来る時ももちろんある。

「はい、これよろしくお願いします」

 黒い竜騎士服を身に纏い、にこっと大きな体に似合わない可愛い笑顔を見せてくれるその人の書類の中にある名前を見た時、この人こそが、あの美しい文字を書くゴトフリー・マーシュだとそう思って、まるで自分だけの特別な宝物を見つけたような気がしてアリスは嬉しくなった。

「確かに受け取りました。お疲れ様です」

 日付の受領印を押しながらいつものお決まりの言葉を言っているはずなのに、その人にだけ、特別な笑顔になっているのを知っているのは、きっとアリス本人だけだ。

 こんな勉強をするしか能がない自分には手の届かない、憧れの人だと、ずっとずっとそう思っていたのだ。


◇◆◇


 アリスは泣きそうになっていた。

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