追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「あたしが全部暴露すれば、あんたの好感度は急降下するわ!」
「ふん。ラシリネがどちらの言葉を信じるかなど、考えるまでもない……」
「親族と想い人なら、当然血の繋がりを優先するでしょうね!」

 アオリの言葉になど聞く耳を持つ必要がないと言わんばかりの態度を取っていた男の顔色が、苦しそうに歪められた。

(疑心暗鬼に陥っている、今がチャンスだわ……!)

 2人の関係性を幼い頃から一番近くで見守っているからこそ、彼の弱点は手に取るようにわかる。
 この男は姉に嫌われるのを、恐れているのだ。

『彼女の一番は、つねに己であるべき』

 そんな強迫観念に駆られ、ラシリネに対して異常なまでの愛を拗らせている。
 それがダリウス・エヴァイシュという人間だった。

「この帝国で姉が賞賛を受ける度に、あたしが偽物だって露呈する確率が上がるの! だから、あの人と同じくらいに強い聖なる力を発動できる魔具をちょうだい!」
「ふん……」

 こちらが何度もみっともなくおねだりを繰り返せば、彼は渋々懐から魔具を取り出し投げ渡す。

「それらは代償が大きい。使う時は、留意するように」

 なんだかんだ言いながらもこちらに気遣わしげな忠告をするあたり、この男が見た目に似合わず優しい男だと言うのは明らかだ。
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