追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「つっけんどんな態度を見せていたかと思えば、ぐっと距離を縮める。そういうの、淑女相手には止めたほうがいいわよ?」
「誰が……」
「姉様に勘違いされても、知らないから!」

 わざわざ長い時間をかけて、隣国までやってきた甲斐があった。
 アオリは満面の笑みを浮かべ、露骨に嫌そうな顔をした彼と別れた。

(やっぱりあたしは、もう用済みみたいね……)

 想定していたこととは言え、いざ現実のものとなると恐ろしくて堪らない。
 彼からこうして魔具を得るのも、これで最期になるだろう。

(あいつとの密約を黙ったままでいられるか、暴露せざる終えない状況になるかは、今後のあたしの頑張り次第ってところかしら……)

 ダリウスはすでに、こちらに感心など存在しない。
 生き続ければ「目障りだ」と蔑まれ、命を落とせば「やっといなくなったか」とほくそ笑まれる。
 その程度の人間だ。

(姉様があたしの立場であれば、人が変わったように大騒ぎするくせに……)

 誰かを狂おしいまでに愛したこともないアオリには、よくわからない。
 彼の気持ちも、「民のために」と都合のいい幻想に浸り自己犠牲を繰り返して、周りに迷惑ばかりかける姉のことも――。
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