追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(一瞬でも、この想いを捨て去る必要はないと喜んだのが、馬鹿みたい……)

 やはり自分達は、仲違いをし続けているほうがよかったのかも知れない。

「わふーん?」

 神獣は先程までとは打って変わって浮かない顔をし始めた主を心配し、「元気を出して」と言わんばかりに身を寄せた。

「スノーエル……」

 ラシリネはこの場で今すぐに泣き出したい気持ちをどうにか堪え、獣とともにトボトボと足取り重く執務室に繋がる仮眠室を目指す。

(陛下と顔を合わせるのは、気まずいわ……)

 ――しかし、その途中で彼の姿を思い浮かべて立ち止まる。
 このまま部屋に戻って皇帝と顔を合わせたら涙を流してしまいそうなほど、精神的に不安定な自覚があったからだ。

(どうすれば、いいのかしら……)

 本音は、今すぐ逃げ出したい。
 誰にも知られぬ場所へ向かい、消えてなくなりたいくらいだ。
 だが、エヴァイシュ帝国の聖女になると決めた時点でそれは叶わなくなってしまった。

(私はいつだって、間違ってばかりね……)

 どれほど失敗を繰り返したら、立派な大人になれるのだろう。
 ラシリネはグスグスと鼻を啜りながら、再び前に向かって歩みを進め始める。
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