追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(いつもだったら、私には無理ですと真っ先に断りを入れていたけれど……)

 いつまで経っても、殿下に対して怯えているわけにはいかない。
 だって2人は、いずれ対等に言い合える夫婦になるのだから――。

「わかりました。やってみます!」

 こうしてラシリネは2人と別れて執務室へ戻ると、恋人に戦いを挑んだ。

「戻ったか」
「わふ!」
「陛下! アデラプス王国への進軍は、お義父様の言うように半分だけで充分だと思います!」
「な……」

 彼は己と顔を合わせた瞬間、嬉しそうに唇を綻ばせる。
 しかし、それは一瞬だけだ。
 すぐに絶句した表情を浮かべると、「構って」と言わんばかりに飛びつくスノーエルをしっかりと抱きかかえて固まった。

「ダリウス様? どうか、なさったのですか?」
「父上の呼び方を、変えたのか……」
「お義母様が、どうしてもと仰るので! どうせなら、お2人とも一緒がいいと思ったのです。駄目でした……?」
「いや。それは構わないのだが……」
「わふん?」

 獣は「一体何が問題なんだよ」と言わんばかりに不思議そうな顔をする。
 陛下はどこか困ったように瞳を細めると、スノーエルを地面に離してからどこか悔しそうに告げた。
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