追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「ダリウス。お前の耳にだけ、入れておきたい話がある」
「なんだ」

 父親に呼び止められたのは、そんな時だった。
 彼は本当に誰にも聞かれたくないようで、声を顰めて静かに耳元で囁く。

「黒いオーラを纏った魔獣の件だが。あれと同じものが、アデラプス王国の障壁に混ざっているようだ」
「あれが一体なんなのか、わかったのか?」
「禁呪を使った代償だと言う話が、一番有力ではある」

 彼の話を聞いたダリウスは、顔色を変えず無表情を貫くのに必死だった。
 思い当たる節があるからだ。

(ラシリネが我が帝国の聖女になると決意したのは、俺のせい……。それは勘違いなどではなく、事実だったと言うことか……)

 ラシリネをアデラプス王国から救い出すためには、彼の国を守護する聖女が必要だ。
 しかし、聖なる力を持つ未婚の女性になど、宛がない。
 ダリウスは誰かを偽聖女に仕立て上げるしかなく、王家の宝物庫に先祖代々伝わる魔具を無断で持ち出し、アオリに手渡した。
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