追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「話が読めんな。なぜ、そうなるのだ?」
「ラシリネには、どれほど想いを募らせたところで届かぬ相手に好意を寄せているらしい。彼女が愛する男はアデラプスの国王に違いない」
「また、ややこしい勘違いを……」

 父親は苛立ちを隠せぬ様子でポツリと呟いたが、うまく行っていれば相談などしない。
 ダリウスは疲弊した様子を見せ、胸元で腕を組んで項垂れた。

「ラシリネ嬢の意思を無視して、思い詰めるのもいい加減にしたらどうだ」
「無視などしていない。これが俺にできる、最善だった」
「対話をしないから、こうなるのであろう」
「彼女は一度決めたら、絶対にそれを曲げない。もっと険悪な雰囲気になるだけなら、このままで居続けるべきだ」
「ラシリネ嬢を嫌いになったわけではないのなら、悪手でしかないぞ」

 人前では冷静沈着なだけが取り柄の皇帝として、今まで生きてきた。
 その仮面を無理やり被り続け、本当の自分を隠し続けるのは不利益にしかならない。
 そんなふうに指摘してくれるのは、父親だけだ。
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