ふたつの弧が、重なるとき ~元エースピッチャーの彼と、走り高跳びの彼女。熱を持った六年越しの初恋を、不器用に重ね合わせていく~【完結】
◇
そして、その日の夕方――。
家に帰った私は、ローテーブルの前に正座をしていた。
両手には、きつく握りしめたスマホ。
今日こそ、祥ちゃんに電話をしようと決めていた。
(今、バイト中じゃないかな……?)
(もし出なかったら、またあとでチャレンジしよう……)
頭の中でシミュレーションを繰り返し、通話ボタンの上で躊躇っていた指を、思い切って画面に押し当てる。
――プルルル……プルルル……
耳元で静かに鳴り響く呼び出し音を聞きながら、大きく深呼吸をした。
(どうか……出てくれますように)
五度目のコールが鳴ったところで、プツッ、と音が途切れる。
『……はい』
電話の向こうから、祥ちゃんの低くて落ち着いた声が聞こえた。
ドクンと心臓が跳ね、身体が小さく震え出す。
「……祥ちゃん」
掠れた声で名前を呼ぶと、少しだけ息を呑むような気配のあと、静かに応えてくれた。
『……うん?』
たったそれだけの、短い返事。
それなのに、彼がどんな顔をして、どんなに優しい心で受け止めようとしてくれているのかが痛いほど伝わってきて、目頭が熱くなる。
驚くほど一瞬で瞳にたまった涙が、ポロッと膝の上にこぼれ落ちた。
「……会いたい……話したい」
震える唇から絞り出せたのは、それだけだった。
本当は、「別れを考えているわけじゃない」とか、「待たせてごめんね」とか、最低限これだけは伝えておきたい、ということを、用意していたはずなのに。
声を聞いただけで、彼への恋しさが一気に溢れ出してしまって、言葉がすべて涙と一緒に流れてしまった。
『……わかった』
少しの沈黙のあと、祥ちゃんはただ優しく、そう言ってくれた。
私たちは、明後日の夕方に会う約束をした。
会う日は決まったから、それまでに、少しでもいいから自分の気持ちをまとめておこう。
これ以上、会えない時間が長引くのは、辛すぎる。
もし、その日にすべてをうまく伝えきれなかったとしても、逃げずに、また次に伝えられるように頑張ればいい。
今はただ、彼と向き合いたい。
離れ離れになった時間があって、ようやくわかった。
私は、自分が思っている以上に、心の底から、祥ちゃんのことが大好き。
頭で考える「好き」という気持ちだけじゃない。
声が耳に届いただけで、涙がこぼれてしまうくらい、全身が勝手に反応してしまうくらい――どうしようもなく彼が必要なんだ。
通話を終えてテーブルに突っ伏し、流れ続ける涙を拭いながら、冷たいスマホを両手でぎゅっと抱きしめた。
そして、その日の夕方――。
家に帰った私は、ローテーブルの前に正座をしていた。
両手には、きつく握りしめたスマホ。
今日こそ、祥ちゃんに電話をしようと決めていた。
(今、バイト中じゃないかな……?)
(もし出なかったら、またあとでチャレンジしよう……)
頭の中でシミュレーションを繰り返し、通話ボタンの上で躊躇っていた指を、思い切って画面に押し当てる。
――プルルル……プルルル……
耳元で静かに鳴り響く呼び出し音を聞きながら、大きく深呼吸をした。
(どうか……出てくれますように)
五度目のコールが鳴ったところで、プツッ、と音が途切れる。
『……はい』
電話の向こうから、祥ちゃんの低くて落ち着いた声が聞こえた。
ドクンと心臓が跳ね、身体が小さく震え出す。
「……祥ちゃん」
掠れた声で名前を呼ぶと、少しだけ息を呑むような気配のあと、静かに応えてくれた。
『……うん?』
たったそれだけの、短い返事。
それなのに、彼がどんな顔をして、どんなに優しい心で受け止めようとしてくれているのかが痛いほど伝わってきて、目頭が熱くなる。
驚くほど一瞬で瞳にたまった涙が、ポロッと膝の上にこぼれ落ちた。
「……会いたい……話したい」
震える唇から絞り出せたのは、それだけだった。
本当は、「別れを考えているわけじゃない」とか、「待たせてごめんね」とか、最低限これだけは伝えておきたい、ということを、用意していたはずなのに。
声を聞いただけで、彼への恋しさが一気に溢れ出してしまって、言葉がすべて涙と一緒に流れてしまった。
『……わかった』
少しの沈黙のあと、祥ちゃんはただ優しく、そう言ってくれた。
私たちは、明後日の夕方に会う約束をした。
会う日は決まったから、それまでに、少しでもいいから自分の気持ちをまとめておこう。
これ以上、会えない時間が長引くのは、辛すぎる。
もし、その日にすべてをうまく伝えきれなかったとしても、逃げずに、また次に伝えられるように頑張ればいい。
今はただ、彼と向き合いたい。
離れ離れになった時間があって、ようやくわかった。
私は、自分が思っている以上に、心の底から、祥ちゃんのことが大好き。
頭で考える「好き」という気持ちだけじゃない。
声が耳に届いただけで、涙がこぼれてしまうくらい、全身が勝手に反応してしまうくらい――どうしようもなく彼が必要なんだ。
通話を終えてテーブルに突っ伏し、流れ続ける涙を拭いながら、冷たいスマホを両手でぎゅっと抱きしめた。