アースシールド♾️

始まる寮生活

 無事に内定式が終わり、今年は6名が入隊することとなった。
 赤坂登志、天城糸、馬場光、紫村ここ、金縄永久、黒羽月の6名だ。
 顔見知りの5人は、特異型を倒したことが大きなアドバンテージとなった。
 もうひとり馬場光は、どうして合格したのかは未だわからない。
 サキさんは、隊員ではなく、毒の知識を生かして、組織の裏方、研究員として働くことにしたということだった。
 今年も同期は男女別れて同じ部屋に割り振られた。
 事前に荷物は送っていたので、今日から寮生活の始まりだ。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 ココちゃんと同部屋。
 荷解きをすると、あまりテンションの上げ下げがないココちゃんが珍しく感動している。

「わあ〜糸ちゃん、荷物もきっちり入ってて綺麗。性格出るよね、本当なんでもできるんだね」

「そんなことない。癖なんだ。なんでもきっちりしたくって」

「お手伝いさんいるのに、自分で全部やってるんでしょ」

「料理や洗濯、洗い物だけだ。草むしりや、花の水やり、金魚のご飯は、ばあやとかお手伝いさんがやってくれている」

「糸ちゃん家のお手伝いさんの仕事…そんな感じなんだ」

 ココちゃんが苦笑いをしながら、荷物を部屋の戸棚へと移す。
 私も段ボールの中から、服や生活用品を取り出し片付けた。

ーーコンコンコン。

 ノックの音でココちゃんと同時に部屋のドアを見る。
 誰だろう。
 扉の近くにいたので立ち上がり、ドアを開ける。

ーーガチャ。

「イトー! 入隊おめでとうー!」

 ぎゅーっ。

「円…」

部屋の中に飛び入ってきた円に抱きつかれるがまま、二、三歩後退りする。

「わー! 今日から一緒に住めるなんて嬉しい!」

ーーぶんぶんぶんぶん。

 腕を持たれて前後前後と揺らされる。
 テンションの上がった円は制御不能だ。

「あれ? 同部屋の子? なんか、見覚えが…」

 円が、ココちゃんに視線を送る。

「お久しぶりです、マドカさん。紫村ココです」

「えー! ココちゃん! あの、ちっちゃかったココちゃん! ちょー美人になってる! 美人部屋じゃん! ビューティー部屋って呼ばせて!」

「円、落ち着け」

「こんなお姉さんになっちゃって!」

 部屋で騒ぐ円にツッコミを入れながら、3人で今日までのことを話した。
 円は案の定、大笑いしたり、大喜びしたり、よくわからないところで大号泣したりした。

ーーピーンポーンパーンポーン。

 会話がひと段落した頃、寮のアナウンスが流れた。

《隊員の皆さん、昼食の準備が整いました。食堂までお越しください》

「お昼だね! 一旦部屋に戻ってから行くからふたりは先に行きな〜! 食堂は一階だよ!」

 またねと手をブンブン振り、部屋から出ていった。

「竜巻のような人だね…」

 ココちゃんが呟いて、全面同意の相槌を打った。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 ココちゃんと一階に移動する。

「サキさんは、第二部隊の研究員になるからアメリカに行くことになったんだって」

「日本を希望してたから、第一部隊なんじゃないかと思っていたが。そういえば、アメリカに行く前の日にチャットで《トワ様を奪ったらただじゃおかないわ!》って謎な内容を送ってきていたな」

 私たちは日本にあるアースシールド♾️第一部隊に所属する。
 部隊自体は、アメリカ、フランスなど、全世界に設置されていて、その中核を担っているのが日本の第一部隊だ。

「研究員は寮じゃないらしいね。うちのお父さんも家から通ってるし、隊員だけが寮生活か」

「入隊育成期間の1〜3年目までは、この東京基地で学校通い。その後はどこに行くかもわからないし、ペアも4年目から変わる人が多数と聞く」

 寮は全国各地にあって、入隊1〜3年目までは育成期間として、東京基地にある学校へ通う。

『東京基地の寮は、一階が食堂や風呂、洗濯場などで、二階が男子部屋、三階が女子部屋になってるよ』

 と先ほど円から説明を受けた。
 巨大な敷地の中に、演習場や訓練場、研究室、私たちが試験を受けた試験会場など、寮以外の施設も設置されていた。
 階段を降りて食堂に向かう廊下を歩いていると、食堂の前でトシと月と永久さんにバッタリ会った。
 馬場光の姿はない。

「糸!」

 月がすぐに私のところまで来て、制服のネクタイを直す。

「ネクタイ曲がってたぞ。完璧なくせに、どっか抜けてんだから」

 今までは気にならなかった月の行動を、永久さんに見られていると思うと居た堪れなくなった。

「自分でできる」

 パッと月の手をネクタイから離す。

「なんだよ、その反応」

 月が不満げに口を紡ぐ。

「月くんは、糸ちゃんのこと好きなのバレちゃうよ」

 ココちゃんが隣でクスッと笑った。

「え!? は!? ちげーし! 俺は美人よりかわいい系が好みだからな!」

 月が真っ赤になってココちゃんに抗議する。
 確かに、月は昔からお姫様みたいな子が好きって言ってたな。
 私はどちらかというと王子か。
 ふたりを見ながら微笑んでいると、永久さんが私の目の前にいた月をココちゃんの前に押しのけて、私の前に立つ。

「俺は、かわいい系より美人系が好きだ」

「そ、そうですか」

 なぜ永久さんは私を見てこんなことを言うのだろうか。

「俺もやっぱり美人系がいい!」

 すかさず、月が割って入る。
 出た、すぐに人と対立したがる。
 月は負けず嫌いだな。
 それにしても永久さんは、どう言った意味で言ったんだろうか。

「おーい! なんだよー! 早く飯に行こうぜ!」

 トシが永久さんと月の肩に腕を回して介入してくる。
 なんだか、今日は永久さんも月も不機嫌だ。

「そうね、いきましょう」

 ココちゃんが食堂の入り口にスタスタ向い、全員で着いて行った。
 寮だと毎日みんなに会えるのか。
 賑やかでいいなとみんなの後ろ姿を見て思った。
 そして、ふと、馬場光ーー彼はどうしたのだろうかと思った。
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