アースシールド♾️

呼び出し

  月から告白され、永久さんがペア変更の提言をしてから1週間。
 月とはあれ以来、すれ違ったままーー。
 どうしているのだろう。

「…ねえ…糸ちゃん? 聞いてる?」

 朝。
 部屋で支度をしていると、ココちゃんが心配そうな顔をしている。

「…ごめん、聞いていなかった。何の話だ?」

「最近ぼーっとしてるよ? ペアのこと気にしてるの? それなら、大丈夫だって言ったでしょ。金縄さんでも月くんでもやるべきことは変わらないんだから」

 龍と契約した次の日、ココちゃんと月、永久さんと私にペアが変更された。
 ココちゃんは、ペアの変更を「どちらでも」とドライに考えているようだった。
 それに…変更を申し入れた永久さん本人は何を考えているんだ。
 どうやって先生たちを丸め込んだのだろう。
 月とのことがあって、永久さんの提言に同行する気にはなれなかったから詳細はわからない。
 私はペアの変更は納得いかないと神先生に話したが、「決定事項だからね〜」と言われ、あの頑固な月でさえも変更を受け入れていた。
 あんなことがあったからかもしれないが。

ーーピーンポーンパーンポーン。

《黒羽月、紫村ココ、金縄永久、天城糸。至急、講師室まで来なさい。繰り返す、黒羽月……》

 突然の呼び出しに、ココちゃんと目を合わせた。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 講師室の前で、永久さんと月と合流する。
 月とはこの1週間、目も合っていない。

「お疲れさま。金縄さんは3日ぶりくらい? ペアじゃないと座学の日しか会わないね」

「ああ。……紫村……ペアの変更、悪かったな」

「ううん。何度も謝らないでよ。永久くんの感覚、何となくわかるから。糸ちゃんの方がしっくりくるんだよね?」

 深く頷いた永久さん。
 月は永久さんの隣で黙っている。

「…月」

 月に話しかけようとすると、後ろからチャラ男の声が聞こえてくる。

「よ〜! 4人、おそろいだね〜。入って入って〜」

 神先生、登場。
 先生、タイミング…。
 ココちゃんと永久さんは、講師室内にいないんかい!と突っ込みたい顔をしていたが、間髪入れずに月が質問する。

「神先生、任務か?」

 神先生は「まあまあ、中で話そう」と逸らしながら、我々を部屋の中へと誘った。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 「あら、みんなお揃いね」

 鶴先生が優雅にティーカップで紅茶を飲んでいた。
 講師室には先生たちの席があって、小学校の職員室と雰囲気が似ている。
 至急と言われて急いで来たが、先生たちは切羽詰まっていないようだ。

 「奥の隊長室に行くから、みんな着いてきて〜!」

 神先生を先頭に奥の隊長室の看板を目掛けて進む。
 隊長室……。
 父はここにいたのかーー。
 はっ……無意識に父の残像を探してしまっていた。
 見たいような見たくないような気持ちが背中に覆い被さる。

「大丈夫だ」

 永久さんが私の背中をぽんっと優しく叩いた。
 それだけで、心がふわっと軽くなる。

「はい」

 永久さんに微笑みかけ、隊長室へ、力強く足を進めた。

°。°。☆°。°。☆°。°。°。°。☆°。°。☆°。°。

 隊長室には、隊長と、そして、なぜかお祖父様がいた。

「糸、久しぶりだな。人間らしくなったな」

 いつものように腕を組んで、私の顔を見たお祖父様。

「お祖父様…どうして…」

「え? ……糸ちゃんのお祖父さん?」

 ココちゃんがバッとこちらを向いたので「ああ…」と小さく答えた。

「おい、糸。お祖父さんも組織の関係者なのか?」

 永久さんにはお祖父様は話していなかった。
 目を見開く永久さんに「お祖父様は今は第一線から退いていますが、組織を立ち上げた人です」とこそっと伝える。
 永久さんはさらに驚いたようで、固まっている。

「月も久しぶりだな。随分成長したようだ」

「……お久しぶりです」

「はっはっは! 月は敬語が使えるようになったか!」

 月は「…うるせ」とこそっと呟いている。
 そうだ、お祖父様と月は、昔からソリが合わないんだった。

「……糸の隣は、紫村くんの娘さんだね?」

「はい。はじめまして。紫村ココと申します」

 ココちゃんが礼儀正しく敬礼をした。

「君の契約動物は熊か。いいな、ぴったりじゃないか」

「恐れ入ります」

 ココちゃんは熊と契約したのか。
 お祖父様は、隊員の顔を見ただけで、契約生物がわかると言っていたが、本当だったのだな。

「そして…君が糸のペアかい? ペア変更の提言をしたそうじゃないか。はっはっは! いいな、嫌いじゃない。恭と同じような目をしている。白カラスか…何とも珍しいな」

「金縄永久です」

「君は山に住んでいたのかい? 鳥たちが君のことを心から信頼しているようだ」

 お祖父様は窓際に移動して、楽しそうに飛び回る鳥たちを見た。

「……第一次宇宙戦争で家族を亡くしました。それからは山で暮らしています。鳥は…唯一の友達でした」

 試験の日にどこに住んでいるか聞いたとき、ハチコクヤマって言っていたが……山に住んでたのか?
 通りで……記憶内を呼び起こしても町名でヒットしないわけだ。
 待て待て待て。
 山に住んでたって…家がないのか…?
 永久さんは、何も言ってなかったが。

「そうか。辛いことを思い出させたな」

「いえ…」

 一気にお祖父様のペースに持っていかれる室内。
 隊長は特に何も言わず、お祖父様が話し終わるのを待っているようだった。
 お祖父様は、次に神先生と鶴先生の前に立つ。

「神くん、鶴くん、久しぶり。元気かい?」

「「はっ。お久しぶりです」」

 先生たちが気をつけをし直す。

 「はっはっは! こっちも成長したものだな。恭と雅の下にいたときは、やんちゃだったのに! 今となっては先生か」

「お恥ずかしいです」と鶴先生。
「雅先生がヤンチャの間違いですよ!」と神先生。

 待てーー。
 父と母の下にいたということは、ふたりの写真に神先生も鶴先生も写っているに違いない。
 もしかして、父の生徒が鶴先生で、母の生徒が神先生なのか…?

(フォトアルバム:アースシールド♾️先生時代)

 記憶を呼び起こすと、うっすらと面影のある神先生と鶴先生がヒットした。
 幼い写真だったから気づかなかったわけだ。

「……昔話が過ぎたな。本題に入ろう。今日、皆に来てもらったのは十二凶絡みでな。神くんたちスリーマンセル、鶴くんたちスリーマンセルの計6人で任務にあたってもらう」

 お祖父様の真剣な表情。
 "十二凶"という言葉に全員の体が強張った気がした。

「鈴森村という、その昔、鈴作りで財を成していた村がある。そこが宇宙人に占拠されていると報告があった」

「宇宙人であれば、十二凶とは関係がないのでは?」

 すかさず口を挟むと、私を一瞥してから、お祖父様は手に持っていた報告書を持ち直した。

「村から逃げてきた者が一名いたのだが、村を占拠した宇宙人が"子"と名乗っていたというのだーー」

「十二支のコードネームか…」

「コードネーム?」

 永久さんが私の小さな独り言に反応する。

「十二凶のメンバーは、コードネームに十二支を使っている。子、牛、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥……というふうに」
< 22 / 24 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop