アースシールド♾️

もうひとりの幼馴染

 ドームの入り口を抜けて、廊下を進む。

「一次試験の会場はこちらですー!」

 アースシールド♾️の制服を着た人や運営委員とみられるスーツの人が会場へと受験者を促す。

「イト! こっちこっち!」

 聞き慣れたハツラツとした声。
 緑地円(りょくち・まどか)がぴょんぴょんとジャンプをしながら手をあげていた。
 円も月と同じ幼馴染。
 歳は一つ上の13。
 黒髪ショートが子供の頃からトレードマークだ。
 円は去年、アースシールド♾️に入隊した。
 先ほどのボックスの列で噂されていた12歳の合格者は、まさに円のことだ。

ーー7年前。

 私は第一次宇宙戦争で両親を亡くし、しばらくの間は、塞ぎ込んでいた。
 何もできなかった無力な自分に落ち込んだ。
 強ければ、父と母を守ることができたのではないかと、5歳ながらに自分を責めた。

『イト! 笑っていれば、福が来るらしいよ! 《笑う門には福来る》って知ってる? イトは天才だからなんでも知ってるか! はー! はっはっはっは!』

『イト! 近所の公園に白粉花が咲いていたの! この黒い粒を割ると…ほら! おしろい!』

そんなとき、持ち前の明るさでいつも寄り添ってくれたのが円だ。
 円とは、本物の姉妹のように育ってきた。
 両親を失ったことを受け入れられるようになった頃、お祖父様にアースシールド♾️に入るための教育を受けろと言われた。
 入隊するなら、当然、円と一緒でなくては嫌だった。
 円に状況を話すと、二つ返事で一緒に訓練を受けることを承諾してくれた。
 その後、お祖父様に許可を得て、一緒に様々な教育を受けてきたのである。
 月は?というと「ずるい!」といって、月も一緒に教育を受けることになった。
 7年の時が経ち、円は13に、私と月は12になった。

 「円!」

 円の元へ駆け寄る。
 隊員は例外なく寮に入るので、円と顔を合わせるのは正月ぶりだった。

 「イト! なんか身長伸びた? 私とうとう追い越されたかも?」

 「158cm」

 「2cmも伸びたの!?」

 「ああ」と頷く。
 円は身長を抜かされたくなかったらしく、悔しい顔をしている。

 「今日は、案内係?」

 制服姿の円が新鮮で、上から下までじっと見てしまう。
 様になってるな。

 「そう、案内係。入団一年目が手分けして案内してんのよ、うちは同期が4人だから! ほんと少なくて困っちゃう! 一次にふたり、二次、三次で1人ずつ。てか何!」

 「制服姿似合ってるなって」

相変わらずの調子であれもこれも話す円に安心する。

 「へへへ、そうでしょ♡ 」

 照れながら、円は嬉しそうに制服の胸元にあるバッジを撫でた。

 「寮は? 慣れたか?」

 「まあまあ。それより、入隊したら学校はもちろんあるけど、すぐに任務にも出るの。やりがいがあるわ。まあ、それほど、危険な世界になっているってことだけど」

 「……私はまだ入団できるかわからない」

 円の前だけは、いつも少しだけ弱気になってしまう。
 私にとって円は姉同然なのだ。

 「何言ってんの、天才のくせに。私でも受かったんだから、大丈夫よ!」

 円は、はははと手を叩きながら笑った。

 「説得力あるな。じゃあ、私は行く」

 円に手を振り、一次試験の会場の方へ歩みを進める。

 「ちょっとー! いじってんのー!? まあ、イトなら楽勝よ! てか! 月はどうしたー!」

 月も一緒に来たから大丈夫だ、と心の中で呟く。
 背中に円の声援がかかって、さらに身が引き締まる思いになった。
 必ず受かって、アースシールド♾️の隊長まで最速で駆け上がってみせる。
 そして、父と母よりも強い隊員になって、地球を守るんだ。
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