可愛いあの子の継母になるなら、獣人大公の嫌われ妻でも構いませんわ!〜どうやら私は侯爵家の悪女のようです〜
 向かいながらブロンズが言った。

「えっ、本当にいったい何が……というか満月休暇?」

 思わず立ち上がったアイリスに、ブロンズは座っていていいと手で示しながら、続ける。

「ご説明いたします。まず今、邸宅内は厳重な警戒態勢がとられています。もしものことがないよう、わたくしは〝塔〟の様子を再度、確認に行っていたのです」
「塔……」

 なんだか物騒な単語に、嫌な予感がした。

「本来ですと先に共有しておいたほうがいいと思われたのですが、旦那様もタイミングを掴みかね――アリム様がおそばにおられることが多かったためでしょう。彼に集中してほしかったのだと思います」

 ――君は心から笑えている。

 そう、ヴァンレックが言った日のことを、アイリスはどうしてか今になってふっと思い出した。

(アリムのためだけじゃなくて、もしかして私のことも考えて……?)

 雑務処理とアリムの面倒を見ることの両方に慣れること、続いて大公妃教育という日課が入った。慣れるタイミングも考えてくれていたのだろうか。
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