本当の私を知られたら終わる恋だと思っていたのに、彼の溺愛が止まりません

言いよどむ私を、吉木さんはしばらく不思議そうな顔で見た後、すぐにまた林田係長との会話に戻っていった。林田係長にいたっては、私の存在など完全無視している。
ここで上手く会話が続けられればウスイサチなんて陰で呼ばれることもないのに。

たしかに私はウスイサチと言われるとおり、存在感も顔も薄い。
色が白くて和風美人だね、なんて話しかけられることもあるけれど、口下手で不器用だからか、上手く会話が続けられない。
事務所の飲み会でも、空いたグラスやお皿をまとめたり、新しい注文の品を配ったりすることで、かろうじてその場での存在を保っている。

学生の頃から目立たずはしゃがず、学園祭も委員会も縁の下の力持ちみたいな仕事ばかりしていた。部活は生物部で、魚やウーパールーパーの世話をしているときが一番楽しかった。
生き物は会話などしなくても、気持ちが伝わるからいい。

もちろん、そんな自分の性格を変えようと、色々と努力してみた。
家では鏡に向かって自然な笑顔が作れるように練習したし「話上手になるには?」なんて本を読んだりもした。でも、何をしてもこの性格は変えられないと、成人式の日にそれを受け入れた。

夕顔はいくら頑張っても向日葵や薔薇にはなれない。
所詮モブは物語のヒロインにはなれないのだ。
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