第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
ティアナside

セナの部屋からでて、庭にでてきた。

引き留めそうになった…
喉が、動かなかった。

胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。

どうしてだろう。
こんなにも苦しいのに、
彼の選択が、あまりにも優しくて。

「……ずるい……」

小さく、こぼれる。

最後に気持ちを伝えて、
私を縛らず、
それでも「ずっと好きだ」なんて。

そんなの、
忘れられるわけがないじゃない。

初恋だった。

初めての友達だった。
やんちゃで無謀だった幼い少年が
約束を守って騎士になって会いにきてくれた。
一緒に剣の稽古もしてくれた。
何も言わず手を差し出してくれた。
好き勝手にやる私をしょうがないなって顔しながらいつもそばで守ってくれた。

不器用で、真面目で、
自分のことより、誰かの背中を守る人。

気づいたら、
当たり前みたいに隣にいて。



胸に手を当てる。
まだ、彼の魔力の温もりが残っている気がする。

確かに私は、
別の誰かに心を向け始めている。

それも、事実。

でも。
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