第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
ティアナside
前を歩く案内役の研究員――
そっとディランの袖を引く。
「ディラン……」
「どうした?」
声を潜めて、囁く。
「右の奥……反応がある」
ディランの視線が、即座に私の示す方向へ向いた。
通路の分岐。
案内人が進もうとしているのは、左側。
けれど――
私の胸の奥が、はっきりと告げていた。
(違う。あっちじゃない)
「……魔力の流れが逆です」
「誘導じゃない、呼び水か」
ディランは小さく息を吐いた。
「罠だな」
案内人は、こちらに気づかぬふりで歩き続けている。
「……まきますか」
私が言うと、ディランは一瞬だけ笑った。
「同感だ」
彼は歩調をわずかに落とし、私の隣へ。
「合図は?」
「次の角です」
角を曲がる直前。
私がラピスラズリにそっと魔力を流す。
――風が、揺れた。
視界の端で、通路の照明が一瞬だけ明滅する。
その隙に、ディランが私の手首を引いた。
音もなく、右奥の非常通路へ滑り込む。
次の瞬間。
「……?」
背後で、案内人が足を止める気配。
だがもう遅い。
私たちは影の中へ溶け込んでいた。
前を歩く案内役の研究員――
そっとディランの袖を引く。
「ディラン……」
「どうした?」
声を潜めて、囁く。
「右の奥……反応がある」
ディランの視線が、即座に私の示す方向へ向いた。
通路の分岐。
案内人が進もうとしているのは、左側。
けれど――
私の胸の奥が、はっきりと告げていた。
(違う。あっちじゃない)
「……魔力の流れが逆です」
「誘導じゃない、呼び水か」
ディランは小さく息を吐いた。
「罠だな」
案内人は、こちらに気づかぬふりで歩き続けている。
「……まきますか」
私が言うと、ディランは一瞬だけ笑った。
「同感だ」
彼は歩調をわずかに落とし、私の隣へ。
「合図は?」
「次の角です」
角を曲がる直前。
私がラピスラズリにそっと魔力を流す。
――風が、揺れた。
視界の端で、通路の照明が一瞬だけ明滅する。
その隙に、ディランが私の手首を引いた。
音もなく、右奥の非常通路へ滑り込む。
次の瞬間。
「……?」
背後で、案内人が足を止める気配。
だがもう遅い。
私たちは影の中へ溶け込んでいた。