第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
細い通路を抜けた先で、空気が一変する。
――重い。
湿ったような、血の匂いを含む魔力。
やがて視界が開けた。
「……これは……」
巨大な円形空間。
天井まで届く魔導管が何本も張り巡らされ、
中央には禍々しい装置が鎮座していた。
無数の水晶槽。
中で脈打つ、濃紫の液体。
魔女の雫。
それらはすべて、中央の心臓部へと流れ込み――
赤黒く、粘ついた“別のもの”へと変換されていく。
「魔女の紅血……」
喉が、ひくりと鳴る。
「これが……ガイルの目的地か」
ディランが剣に手をかけた。
「ここまで辿り着くとは、さすがだよ」
拍手の音が、やけに大きく響いた。
奥の通路から、ゆっくりと現れた男。
白衣の上から深紅の外套を羽織り、
眼鏡の奥の瞳だけが、異様な熱を帯びている。
「ガイル……!」
ディランが一歩前に出る。
「王子殿下に、共鳴の令嬢。
わざわざ揃って来てくれるとは光栄だ」
愉しげに笑う。
「……これが、あなたの望んだもの?」
私が問いかけると、
ガイルは肩をすくめた。
「“王になる力”だよ」
淡々と、狂気を隠しもせず言い放つ。
誰かの気配が、ゆっくりと立ち上がる。
「あなたに、聞きたいことがあります」
その声に、ディランが一瞬だけこちらを見るが、止めなかった。
ガイルは興味深そうに眉を上げる。
「ほう?」
「母――アイリスは、あなたの研究に関わっていましたね」
空気が、ぴんと張り詰める。
ガイルの笑みが、わずかに止まり、
次いで――ゆっくりと歪んだ。
「……なるほど」
低く、感嘆の混じった声。
「そうか。君が――あの女の娘か」
その言い方に、胸が疼く。
「母の死は事故ではなかった。
研究の危険性に気づき、止めようとしていた」
「そして――」
一瞬、言葉を飲み込む。
「私が“器”である可能性があることも、知っています」
――重い。
湿ったような、血の匂いを含む魔力。
やがて視界が開けた。
「……これは……」
巨大な円形空間。
天井まで届く魔導管が何本も張り巡らされ、
中央には禍々しい装置が鎮座していた。
無数の水晶槽。
中で脈打つ、濃紫の液体。
魔女の雫。
それらはすべて、中央の心臓部へと流れ込み――
赤黒く、粘ついた“別のもの”へと変換されていく。
「魔女の紅血……」
喉が、ひくりと鳴る。
「これが……ガイルの目的地か」
ディランが剣に手をかけた。
「ここまで辿り着くとは、さすがだよ」
拍手の音が、やけに大きく響いた。
奥の通路から、ゆっくりと現れた男。
白衣の上から深紅の外套を羽織り、
眼鏡の奥の瞳だけが、異様な熱を帯びている。
「ガイル……!」
ディランが一歩前に出る。
「王子殿下に、共鳴の令嬢。
わざわざ揃って来てくれるとは光栄だ」
愉しげに笑う。
「……これが、あなたの望んだもの?」
私が問いかけると、
ガイルは肩をすくめた。
「“王になる力”だよ」
淡々と、狂気を隠しもせず言い放つ。
誰かの気配が、ゆっくりと立ち上がる。
「あなたに、聞きたいことがあります」
その声に、ディランが一瞬だけこちらを見るが、止めなかった。
ガイルは興味深そうに眉を上げる。
「ほう?」
「母――アイリスは、あなたの研究に関わっていましたね」
空気が、ぴんと張り詰める。
ガイルの笑みが、わずかに止まり、
次いで――ゆっくりと歪んだ。
「……なるほど」
低く、感嘆の混じった声。
「そうか。君が――あの女の娘か」
その言い方に、胸が疼く。
「母の死は事故ではなかった。
研究の危険性に気づき、止めようとしていた」
「そして――」
一瞬、言葉を飲み込む。
「私が“器”である可能性があることも、知っています」