第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「いやぁー、楽しかったわ!!
いいリフレッシュにもなったし、インスピレーションがぐぐっと来たわ!」

ルイが上機嫌に笑う。

「私も楽しかったです」

アリスも、珍しく肩の力を抜いた笑みを浮かべる。

「そうだね」

3人で顔を見合わせ、
そのまま並んで帰路についた。

――そして後日。

どうやらルイは、あの日のあと
仕事が驚くほど捗ったらしい。

一方、私といえば。

「お嬢様、本日のご予定ですが、アドルフ様との朝食会後ラルクル商会にて宝石鑑定のお仕事になります―」

「承知しました。お嬢様」

「……?」

ユウリが困惑した表情でこちらを見つめる。
私の後ろで髪を整えていたアリスが、くすくすと笑った。

「な、なんでもない!」

私が慌てて否定すると。

「そうですか」

腑に落ちないながらも、ユウリはそれ以上追及しなかった。

……ただ。

その日からしばらく、
侍女言葉が、どうにも抜けなかった。

「承知しました、お嬢様」
「かしこまりました、お嬢様」

自分で言って、
自分で違和感を覚える始末だ。

原因は――
きっと、誰も口にはしない。

けれど一つだけ、はっきりしている。

あの日の外出は、
思った以上に――癖になる体験だった。
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