第3部 夜明けが世界を染めるころ、悪意の見える伯爵令嬢は王子の執着から逃れられない
「殿下には、あの方しかいません。
むしろ……あの方以外は、受け付けません」
「レイがそこまで言うのは珍しいな」
殿下は苦笑混じりに肩をすくめた。
「契約が終わったら、解放しろと言い出すかと思っていたよ」
「……最初は、そう思っていました」
正直に答える。
「ですが、考えが変わりました」
一度言葉を選び、静かに続けた。
「私は――あの方に、殿下と並んで歩いてほしいと思ったのです」
殿下が、こちらをまっすぐに見る。
「殿下の本質を知った上で、それでも隣に立とうとする人。
守られるだけではなく、共に戦おうとする方です」
自然と、口元が緩んだ。
「……優しくて、少し不器用で、可愛らしい方でもある」
殿下は小さく息を吐き、楽しそうに笑った。
「そりゃあ、もちろんそのつもりだよ」
不敵に口角を上げる。
「俺が、逃すと思うかい?」
「……いえ」
私は静かに首を振った。
「殿下が、そう簡単に手放す方ではないことは――
誰よりも、私がよく知っております」
静かに息を吐いた。
彼女は、肩書きでも噂でもなく。
結果と行動だけを見て、人を評価する。
それは殿下が最も欲し、
そして最も得られなかった評価の仕方だった。
蝶の会のときも、そうだ。
殿下は自らのやり方を一切隠さず、最後まで逃げ道を示した。
まだ引き返せる。無理をする必要はない――と。
それが彼の優しさであることを、
ティアナ様は正しく理解していた。
……口では「好きではない」と言いながら。
殿下の心も、
そして未来も。
あの方の隣にこそあるのだと。
私は、疑いなく――そう確信していた。
私は、静かに言葉を継ぐ。
「……殿下
彼女を失えば、殿下は二度と同じ選択ができなくなります」
沈黙が落ちた。
やがて殿下は、困ったように笑った。
「レイにそこまで言わせる人物を俺は知らないな」
「事実です」
「……そうだね」
殿下は椅子にもたれる。
むしろ……あの方以外は、受け付けません」
「レイがそこまで言うのは珍しいな」
殿下は苦笑混じりに肩をすくめた。
「契約が終わったら、解放しろと言い出すかと思っていたよ」
「……最初は、そう思っていました」
正直に答える。
「ですが、考えが変わりました」
一度言葉を選び、静かに続けた。
「私は――あの方に、殿下と並んで歩いてほしいと思ったのです」
殿下が、こちらをまっすぐに見る。
「殿下の本質を知った上で、それでも隣に立とうとする人。
守られるだけではなく、共に戦おうとする方です」
自然と、口元が緩んだ。
「……優しくて、少し不器用で、可愛らしい方でもある」
殿下は小さく息を吐き、楽しそうに笑った。
「そりゃあ、もちろんそのつもりだよ」
不敵に口角を上げる。
「俺が、逃すと思うかい?」
「……いえ」
私は静かに首を振った。
「殿下が、そう簡単に手放す方ではないことは――
誰よりも、私がよく知っております」
静かに息を吐いた。
彼女は、肩書きでも噂でもなく。
結果と行動だけを見て、人を評価する。
それは殿下が最も欲し、
そして最も得られなかった評価の仕方だった。
蝶の会のときも、そうだ。
殿下は自らのやり方を一切隠さず、最後まで逃げ道を示した。
まだ引き返せる。無理をする必要はない――と。
それが彼の優しさであることを、
ティアナ様は正しく理解していた。
……口では「好きではない」と言いながら。
殿下の心も、
そして未来も。
あの方の隣にこそあるのだと。
私は、疑いなく――そう確信していた。
私は、静かに言葉を継ぐ。
「……殿下
彼女を失えば、殿下は二度と同じ選択ができなくなります」
沈黙が落ちた。
やがて殿下は、困ったように笑った。
「レイにそこまで言わせる人物を俺は知らないな」
「事実です」
「……そうだね」
殿下は椅子にもたれる。