言えない。言わない。
教室の中は、まだ少しざわざわしていた。


椅子を引く音。

ランドセルを机に置く音。

知らない声が、あちこちで重なっている。


月乃は教室の入り口で、少しだけ足を止めた。


黒板。

窓。

きれいに並んだ机。


今日からここが、自分たちの教室になる。


月乃「……あった」


小さな紙が貼ってあった。


あまね つきの


ランドセルを机の横にかけて、椅子を引いて座った。

なんとなく背筋が伸びる。

新しい教室。

新しい机。

胸の中が、まだ少しだけ落ち着かない。


雫「月乃の後ろだ」


月乃が振り向く。

すぐ後ろの席が雫だった。


月乃「ほんとだ!」


それだけで、少し安心する。

知ってる顔が近くにある。

それだけで、教室の空気が少しやわらかく感じた。


教室のドアが開き

玲央が入ってきた。


玲央「ここかー」


玲央「あ、あった」


玲央「隣じゃん」


月乃の顔がぱっと明るくなった。


月乃「ほんとだ!」


玲央が椅子を引いて座った。


教室はまだざわざわしている。


月乃は一度だけ、後ろを振り返った。

雫の隣に座った男の子。

さっき玲央と話していた子だった。

雫が、その子の方を見ている。

何か話しそうな空気だった。

月乃は少しだけその様子を見て、

それから前を向いた。

まだ知らないことばかりの教室。

でもきっと、

ここでいろんなことが始まる。



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