胡蝶の夢を貴方と
時は江戸時代。場所は吉原。ここは、哀しくも美しい女の園。鳥籠の中の遊女たちが、今宵も買われるのを待っている。

そんな遊女たちの頂点に君臨する存在が花魁。高い教養と芸事に長け、庶民の憧れでもあった存在。豪華な着物を見に纏い、髪にはいくつも簪をつけ、一夜限りの旦那様に夢を見させる。

これは、一人の花魁の物語。



温かな日差しが見世の並んだ遊郭を照らしていく。時刻は午前十時。この見世の一番人気である花魁・若紫(わかむらさき)はゆっくりと目を開ける。そろそろ、昼の営業に出る遊女たちが起床する時間だ。

若紫は気怠い体で起き上がり、窓を開ける。窓の外に広がるのは吉原の見慣れた景色。格子のついた窓ばかりが見える。

「わっちは、いつになったら自由になれるのかねぇ……」

十にもならない頃に田舎から吉原へと売られてから、若紫の世界は吉原だけになった。鳥籠の中、いつか自由になる時を夢見てただ客と一夜限りの恋をする。
< 1 / 9 >

この作品をシェア

pagetop