胡蝶の夢を貴方と
「今夜は、あの人は来てくれるんでしょうか……」
恋という言葉を思い浮かべると、若紫の胸が締め付けられる。若紫に会いに吉原に通う客は多い。しかし、若紫はたった一人の男性にだけ特別な想いを抱いている。下級武士である龍之介(りゅうのすけ)だ。
龍之介は財力があるわけではない。年に二度ほど来れたら良い方だ。吉原の高級遊女である若紫と遊ぶには、一晩で百万円は最低でもかかってしまう。
(あまり会えるお方ではありませんが……)
若紫は机の引き出しを開ける。そこには、藤の花を模した簪があった。龍之介がくれたものである。
『そなたには、やはり紫がよく似合うな』
簪をさしてくれた時、微笑んだ龍之介の顔を若紫は一度も忘れたことはない。胸の高鳴りが激しくなっていく。
「龍之介様。お慕いしております」
いつか、この告白を彼に伝えられたら。いつか、龍之介が自分を身請けしてくれたら。龍之介に手を引かれ、鳥籠の外を共に歩けたら。そんな甘酸っぱい妄想をしてしまう。
恋という言葉を思い浮かべると、若紫の胸が締め付けられる。若紫に会いに吉原に通う客は多い。しかし、若紫はたった一人の男性にだけ特別な想いを抱いている。下級武士である龍之介(りゅうのすけ)だ。
龍之介は財力があるわけではない。年に二度ほど来れたら良い方だ。吉原の高級遊女である若紫と遊ぶには、一晩で百万円は最低でもかかってしまう。
(あまり会えるお方ではありませんが……)
若紫は机の引き出しを開ける。そこには、藤の花を模した簪があった。龍之介がくれたものである。
『そなたには、やはり紫がよく似合うな』
簪をさしてくれた時、微笑んだ龍之介の顔を若紫は一度も忘れたことはない。胸の高鳴りが激しくなっていく。
「龍之介様。お慕いしております」
いつか、この告白を彼に伝えられたら。いつか、龍之介が自分を身請けしてくれたら。龍之介に手を引かれ、鳥籠の外を共に歩けたら。そんな甘酸っぱい妄想をしてしまう。