【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】

1-12 彼の竜

 クラリスは、兄のリカルドが帰って来る時間までは待つと言って、長い時間本宅には戻らなかった。

 こうして、身体の不調を気にすることなく、外出が出来るようになったのが本当に嬉しいらしい。

 明るい性格の彼女の、くるくると変わっていく表情を見るそれだけで、スイレンは楽しかった。

 ガヴェアに居た頃は、引き取られた叔母の家で冷たく当たられていたスイレンに、余計な事情に巻き込まれたくないと思ってか、周囲の人は遠巻きにしていた。

 そんなスイレンに向かって、屈託なく笑って話してくれるクラリスの身体を治療することを手伝えたのは、本当に嬉しかった。

「もうっ……何をしているのかしら。お兄様、本当に遅いわね」

 リカルドの帰宅が遅く焦れているクラリスは立ち上がり、とっぷりと暮れている窓の外を見た。

 今朝、リカルドは仕事に行く時に、心配だから遅くならないように帰って来ると言っていたから、何か急な仕事が舞い込んだのかもしれない。

 貴族であるクラリスは、そろそろ本宅に向けて出発しなければならない時間のようで、彼女に付き添っている影のような侍従から、急かされる間隔が短くなってきた。

 彼は貴族令嬢であるクラリスの侍従は護衛も兼ねているらしく、黒髪黒目を持つ細身の美しい少年だ。ただ、鋭利な刃物を思わせるような鋭い目付きをしている。

 勿論、警護対象で貴族令嬢であるクラリスを守らなければならないので、誰に対しても警戒するのに越したことはないだろう。

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