【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 美しい顔には涙の跡があり儚げな容姿も手伝って、同性だというのに思わず庇護欲を誘われた。

 だが、その細くて白い手を、美しい青年は無表情のままで振り払った。馬車に繋いであった馬を一頭外すように御者に指示をして、泣いているイジェマを残しその馬に乗って無情にも行ってしまった。

 一際大きな声で泣き出したイジェマのことを見ていられなくて、スイレンは人をかき分けて前に出た。

 いきなり舞台へと現れたスイレンに、野次馬たちからなんだなんだと揶揄うような声がした。それを無視をして、ドレス姿でしゃがみこんでしまっていたイジェマを助け彼女を無理矢理に立たせ、傍近くにあった止められた馬車の中へと導いた。

 御者はあまりの事態にどうして良いか、おろおろとして混乱している様子だ。

「あのっ……馬って、一頭足りなくても走れます? とりあえず、ここから離れます。出してください」

 スイレンの言葉に目を覚ましたかのように動き出した御者は、すぐに出発の支度を整えた。

 泣いたままのイジェマと共に乗り込んだスイレンの指示に従って、馬車は動き出した。

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