【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】

2-2 溺れる

 夕暮れも迫る遅い時間に本来であればもっと早く帰るはずだったスイレンが馬車に乗って家に帰り着くと、リカルドとワーウィックは何故か家の前で待っていた。

 彼も仕事帰りそのままだったのか、身分を表す黒い騎士服を着ているままだ。

 スイレンがイジェマと共に乗っている馬車が止まると、二人とも不思議に思ったのか訝しげに馬車へと近づいて来た。

 御者が恭しく開けた扉から、中を窺い見たその顔はひどく驚いている。

「スイレン! この馬車はパーマー家のものか。 イジェマ。これは一体、どういうことだ?」

「リカルド……どうしたら良いの。私達の計画は、駄目になってしまうかもしれないわ……」

 険しい表情を浮かべたリカルド、またさめざめと泣き出したイジェマはそう言った。御者に手を借り、馬車を降りようとしていたスイレンは彼女の言葉を聞いて戸惑った。

(計画って……何のことかしら? 二人の婚約解消は、もう成立したのではないの?)

 もしかしたらという不安で黒いもやもやした気持ちが、スイレンの胸中を渦巻いて行く。

「何? どういうことだ? スイレン。イジェマ。ここで話すのは、いけない。とにかく、家の中へ入ってくれ」

 ワーウィックは黙ったままで、スイレンの手を握り引いたままで家の中へと歩く。また泣いてしまったイジェマに、寄り添うのはリカルドだ。

 悲しんでいる女性に対し優しくするのは、当たり前のことだ。騎士道にも、則っている。

 スイレンにだって、それは理解出来ていた。けれど、この二人が寄り添うのを見るのは辛い。リカルドと、お互いの気持ちを確かめ合った今なら尚更そう思った。

 応接に使う客室へと入り、リカルドは大きなソファへと涙を流すイジェマをゆっくりと座らせた。

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