【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 身体を洗うことも許されていない彼に苦手な浄化魔法をかけようと懸命に自分へと手を伸ばすスイレンを見かねてか、リカルド自身が手に触れない程度の距離に近づいてきてくれたりもする。

 スイレンが掛ける浄化魔法では、汚れ切ってしまった黒い騎士服を綺麗にすることは出来ない。

 だが、下着だけでも清潔にすることは出来ているだろうか。それは自分には確かめることは出来ないけどと思ってから、スイレンは何を考えているのだと赤面した。

 彼と会うことが日常になって来たある日、スイレンは思い付きで勇気を出して歌を歌った。

 ガヴェア王都名物である花娘達は、年に一度の大祭の時に歌を歌いながら生花を売る。その時に、歌っている歌のひとつだ。

 リカルドはスイレンの歌に耳を澄ませるように目を閉じて、歌い終わると音を立てない拍手をしてくれた。

 歌が聞こえてしまったのか。「誰だ?!」という近くに居たらしい衛兵の誰何の声が聞こえ、スイレンは慌ててまた走って逃げた。


◇◆◇


 その日の仕事終わり、帰宅したスイレンはいつものように、叔母のマーサに売り上げを渡すために母屋の戸を叩いた。

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