【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 リカルドは椅子から立ち上がって近づくと、鉄格子越しに目を合わせて彼女に名前を聞いた。

 名前さえわかっていれば、後で秘密裏に彼女を迎えに来ることも出来るだろう。戦闘特化の竜騎士の癖に、諜報活動が得意なブレンダン辺りに頼めばきっと上手くやってくれるはずだ。

「スイレン・アスターです。竜騎士さま」

 スイレンは、可愛らしい鈴の音のような声で言った。

(可愛い名前だ。この子に、良く似合う)

 そして、出来るだけ早くここから去るように伝えた。

 本当は後で迎えに来ると、もっと詳しく事情を説明しておきたかった。だが、飛行する竜の速度は神速を誇る。

 ワーウィックの心の声が聞こえる範囲に居るということは、もうそう時間に猶与はない。そうこうしている内に、王都全体に警戒音が鳴り響き、慌てふためいた衛兵たちの姿も見え始めた。

「走れ!」

 リカルドのその大きな声に、警戒音を聞いて呆然としていたスイレンは我に返ったように走り出した。

 大型の攻撃魔法の音もする。魔法大国ガヴェアには、多くの詠唱不要の魔導兵器があるというから、それが火を吹いたのだろう。

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