【書籍3巻発売中】ひとりぼっちの花娘は檻の中の竜騎士に恋願う【コミック3巻発売中】
 リカルドは、夢にまで見た書類に直筆で名前を書いた。婚約解消の届け出を少しでも早く出したいからと、本邸にまで呼び出していたイジェマの名前を書かれた時には、万感の思いだった。

「この書類。私が帰りに貴族院に提出しておいてあげましょうか?」

 さっぱりとしたイジェマがそう言ってくれたので、リカルドは彼女の言葉に頷いた。

 彼女は、もうこれで私には用ないわよね、と言って足早に去って行った。

 婚約解消の書類は、薄っぺらな紙一枚だ。だがその書類に辿り着くまでの困難を考えたら、胸に来るものがあった。

 パーマー家に支払った婚約解消の代償は、それなりに多額ではあったが、別に家が傾くほどの額でもない。竜騎士の俸給は莫大だし、デュマース家の領地だって潤っている。その後の事を思えば、何も惜しくはなかった。

 それもこれも。全てはあのスイレンに、今まで言えなかった思いを告白するためだ。

 檻の中で会って以来、リカルドの心はずっとスイレンに囚われているままだ。

< 313 / 340 >

この作品をシェア

pagetop