私は彼の所有物

世界が彼を見つけた






「あぁ、今日発売日か……」



本屋に入るとすぐ見つけることができた。
彼の写真集。
写真集の表紙には女性がベッドに寝そべり、こちらに背中を向けている。
浮き出た背骨。
色は異常なほどに白い。

今、話題のその写真集。
買うのに戸惑っている私をよそに、何人もの女性がその写真集の前で立ち止まる。
そして手に持ち開く。
棚に戻される事無く財布と共にレジに向かう。


「……」


私は小さく溜息をついて本屋を出た。

自分の裸見てもしょうがない。
ましてや、本当に私かどうかなんて分からない。
私じゃないのもあるんじゃないかな?


買う勇気は無い。
見たくも無い。

コートのポケットに手を入れる。
振動するスマートフォンに手がぶつかった。
スマートフォンを取り出し、液晶画面を見ると“彼”の名前が見えた。

心配かけたかな。
何も言わないで出てきちゃったから。



「……もしもし」

〈どこにいるの?〉



怒ってるんですか?
それとも心配してるんですか?
無感情な声だけじゃよく分からない。



〈早く来てよ
君がいないと仕事出来ないんだけど〉


……そうですね。
仕事出来ないですよね。



「すぐ行きます」

〈走ってよ
君じゃないと駄目なんだから〉

あぁ……。
その言葉好き。
今までの憂鬱が吹っ飛びました。
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