私は彼の所有物
今の時代自己表現は簡単に出来る。
SNSという便利な物があるから。
腕が良ければ有名人にだってなれる。
年齢なんて関係ない。
幼い人でも才能があれば下剋上は出来る。
藤井 ケイもそのひとり。
写真SNSを使い、わずか数年で有名になった。
「……おかえり
本当に走ったんだ」
息を切らしてアトリエに入れば撮影の準備をしているケイさんがいた。
私の方をいっさい見ない。
「ケイさんが走れって言うなら走ります」
「……馬鹿らしく従順だね」
鏡越しに私をチラリと見る。
服装はいつも通り全身黒。
短髪の黒髪に黒い瞳。
死んだ魚の目をしてる。
……それが色っぽいんだけどね。
薄い唇は滅多に笑わない。
そして、中性的にしなやかな指にはいつも煙草が挟まれている。
「泣いたの?」
「寒かっただけです」
「じゃ、脱いで
ここは暖かいでしょ」
ケイさんの作品はいつも女性の裸。
別にエッチな物じゃなくてアートとして私は裸になる。
今ではもう、脱ぐのに恥じらいも無い。
仕事がヌードモデルだなんて、親が聞いたらショックだろうな。
「今日も訊かれたよ
いつも写真にうつるモデルは誰かって
……教えるわけないじゃんね」