私は彼の所有物



“隠し撮り…?”
差し出されたカメラ。
そこには髪をかきあげている私がいた。
風でぐしゃぐしゃになった髪の毛を整えていた、たったその一瞬。
“かなり綺麗だと思うでしょ”
自信満々なその一言。
今と同じく、私は頷く事しか出来なかった。
凄く綺麗で自分だという事を忘れてしまうぐらい。
“バイト感覚でいい
そこらの時給より出す
だから、お願い”
今考えれば、あの時の彼は猫かぶってた気がする。
写真とその可愛げのあるお願いにやられてしまった。
今はそんな可愛げはまったく無い。



「……雨?」



ちょうどつむじの位置に水っぽいものが当たった。
疑問に思った直後、雨は大粒で降ってくる。
一瞬にして大量の雨。
急いで屋根がある店に走った。



「あーあ……」



溜息をついて空を見上げる。
止むわけないか…。
イヤホンを耳から取り、ウォークマンを鞄にしまう。

どうしよう……駅まで、まだあるのに。



「あれ?菜緒ちゃん?」



目の前に傘をさして歩くひとりの男性。
その人は私の名前を呟いた。
そして、ゆっくりとこちらに向かってくる。



「……純くん」

「大丈夫?
急に降ってきたね
傘入ってく?」



授業で席が隣の子。
唯一、クラスで名前を覚えた。
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