青春×6

あっさり、恋人

久保田との“うそ告”から、三時間後。

部屋の中は静かなのに、

頭の中だけ、ずっと落ち着かなかった。

——あれ、なんだったんだろ。

考えかけて、やめる。

それよりも。

もっと、別のことが頭に浮かんでいた。

スマホを見る。

——加戸

ちょうど、やりとりしていた。

『今コナンの映画観てる』

『それ見たことある笑』

『ネタバレしてあげよっか』

『やめろ』

『ごめんごめん笑』

既読。

……返信が来ない。

「あ」

会話、途切れた。

その瞬間、ふと思う。

——今、じゃない?

チャンス、かもしれない。

でも。

指が、止まる。

そのとき、思い出した。

前に、何気なく聞いたこと。

『加戸ってさ、クラスの女子に告られたら付き合う?』

『うん』

『え、だれでも?笑』

『うん。だって断るのめんどいもん』

……ほんとに?

冗談、だったかもしれない。

でも。

もし、本当なら。

——いけるかも。

心臓が、少し速くなる。

深く考えたら、無理になる。

だから、

そのまま。

『ねー加戸』

送る。

すぐに既読。

『んー?』

一瞬だけ迷って、

でも、

そのまま打った。

『付き合ってー』

送信。

心臓の音が、大きくなる。

やばい。

やばい。

やばい。

数秒が、やけに長い。

そして、

ぽん、と返ってきた。

『いいよ。急だね笑』

——え。

思わず、固まる。

え?

こんな、あっさり?

もう一回、画面を見る。

見間違いじゃない。

「……え」

小さく声が出る。

あっさりすぎる。

でも。

じわじわと、

実感が追いついてくる。

——付き合った?

私たち、今。

恋人?

遅れて、

嬉しさが、こみ上げてくる。

「……やば」

思わず、笑ってしまう。

最初に、報告したのは。

——久保田

少しだけ迷ったけど、

やっぱり、送った。

『加戸と付き合ったよー』

既読がつく。

少しだけ、間があって。

『おめでとー!』

いつも通りの、軽い感じ。

でも、そのあと。

『好きな人…んー明日言うわ。』

その一言に、

少しだけ引っかかる。

——明日?

なんで今じゃないんだろ。

でも。

『了解笑』

そう返して、

それ以上は聞かなかった。

今日はもう、

いろいろありすぎて。

考えるの、ちょっと疲れた。

スマホを閉じて、

ベッドに倒れ込む。

——付き合ったんだ。

その事実が、

ゆっくりと胸に広がっていく。

嬉しくて、

でも少しだけ、不思議で。

目を閉じると、

加戸の顔が浮かんだ。

その夜は、

なかなか眠れなかった。
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