青春×6

言ってしまった名前

期末テストが近づいてきて、
クラスの空気も少しだけ変わっていた。

「やばい、今回ほんと無理かも」

「それ毎回言ってるじゃん」

そんな会話が増えて、
みんな少しずつ焦り始めている。

そんな中。

「図書館で勉強しない?」

あゆの一言で、
放課後に集まることになった。

メンバーは、あゆとみおと、私。

本当はかおるも来る予定だったけど、

『ごめん、お腹痛すぎて無理』

って連絡が来て、今日はお休み。

少しだけ静かな図書館。

最初はちゃんと勉強してたはずなのに、

「ねえ、ちょっと休憩しよ」

って誰かが言って、

気づけばノートは閉じられていた。

「てかさ」

あゆが、にやっと笑う。

「あたし、ゆうまのこと好きなんだよね」

「え、急に!?」

思わず声が出る。

でもその顔、ちょっとだけ照れてて。

「あーやっぱりって感じ」

みおが笑う。

「わかりやすいよね」

「え、そんな!?」

わいわいした空気。

そのまま、みおの方を見る。

「みおは?」

「んー」

少しだけ考えてから、

「……久保田」

一瞬、時間が止まる。

「え、ほんとに!?」

「うん」

ちょっとだけ照れながら笑うみお。

「なんか、優しいし、ちゃんとしてるし」

その言葉を聞いて、

胸の奥が、ほんの少しだけ揺れる。

でも、それはすぐに消えた。

——そっか。

みお、久保田のこと好きなんだ。

「で?」

あゆがこっちを見る。

「めいは?」

ドキッとする。

一瞬だけ、言葉が詰まる。

でも。

ここでごまかしたら、変な気がして。

『加戸とか?』

あの日、自分で送った言葉がよぎる。

——もう、気づいてる。

逃げられない。

私は、ゆっくり口を開いた。

「……加戸」

言った瞬間。

空気が、ほんの少しだけ変わる。

「やっぱりね!」

あゆがすぐに言う。

「え、バレてた!?」

「バレバレ」

みおも笑う。

「よく話してるし」

「あとはさ」

あゆが続ける。

「二人とも、楽しそうなんだよね」

その言葉に、

心臓が少しだけ強く跳ねる。

楽しそう。

そう見えてたんだ。

「てかさー!」

あゆが身を乗り出す。

「いつから!?」

「え、いつからだろ……」

気づいたら、だった気がする。

でも、それを言葉にするのは難しくて。

「最近、だと思う」

そう答えると、

「かわいいじゃん」

って笑われる。

顔が少し熱くなる。

——言っちゃった。

もう、戻れない。

ただの“気になる人”じゃなくて、

ちゃんと“好きな人”として、

言葉にしてしまった。

でも、不思議と。

後悔は、なかった。

むしろ、

少しだけ、すっきりしてる。

自分の気持ちを、

ちゃんと認めたみたいで。

「応援するからね!」

あゆが言う。

「うん、私も」

みおも笑う。

その言葉に、

ちょっとだけ照れながら、

「ありがと」

って返した。

図書館の静かな空間で、

小さな恋バナは、まだ続いていく。
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