過つは彼の性、許すは我の心 肆


 少し前の私もそんな状態だったのだろう。

 目の前にある問題に正解らしい正解がない事がとても辛くて、感情が揺り動かされない様に心を閉ざす様になってーーー限界が来た。

 しかもそれが周りを巻き込む事になった私には、他人事だと思えなかった。

 辛かっただろうな…。

 年上の圭三郎さんは私以上に繰り返し、耐えていたのだ。


「天條に関わる全てが、その人の元々あった人格を大きく変えてしまう。私はそれが怖かった」

「圭三郎さん…」


 その横顔には辛苦が滲み出ていて、胸が締め付けられる。


「四葉や凌久がどんな扱いを受けているのか知っていた筈なのに…私は…」


 これもたられば(・・・・)なんだろう。

 天條を知らずに、凌久君に全てを告白されていたら私は受け入れられた?

 ううん…きっとそもそも信じられなかったと思う。

 ニュースや雑誌に書かれた内容が、身近にあるなんて思いもよらないだろう。

 幼馴染すら救えなかった私には、凌久君を傷付けるだけに終わった筈。


「だから、」

「圭三郎さん?」


 ふいに言葉を切った圭三郎さんを見れば、再び足を止めて私を見つめていた。

 そして、


「自分の立場や凌久の事を考えたら、綴様には獅帥様のお傍に居てもらった方がいいんでしょう。それでも、私は獅帥様達や凌久に良い変化を与えた綴様には、心穏やかにいて欲しいと、そう思っています」 
 
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