過つは彼の性、許すは我の心 肆
顔の見た事のない凌久君のお母さんが、ヨレヨレの格好の圭三郎さんの襟元を正す姿が思い浮かぶ。
容易に想像出来る光景にほっこりしながら、足を止めた私を圭三郎さんは促して、また歩き始めた。
「逆にカズミの母親は親戚ではありましたが、話すことも少なくて…ただ生真面目で規律正しい方だったと思います」
「へえ…」
カズミさんのお母さんって真面目な人だったんだ、ちょっと意外かも。
カズミさんがあんなコスプレしているからお茶目な人だったって言われた方が想像つき易い。
ーーーでも、
「だからこそ、あんな恐ろしい事をするなんて思えなかった」
そこ、なんだよね。
何故あんな恐ろしい事を出来たのか。
狂気に走らせたモノは一体何だったのか。
「凌久の母も一緒です。どうしてあんな事…」
あんな事?
溜息を吐きながら顔下半分を手で覆う圭三郎さんは、聞き返すのを躊躇う程に、何かに対して酷く後悔している様だった。
「起きた事を言っても仕方ないのは分かっているんですけどね…。そうしなければ凌久もいなかったので」
ははっ…と力無く笑う圭三郎さんは何時もの草臥れた感じではなく、大きな壁を目の前にして途方に暮れた1人の人間だった。
ああ分かるな。
私も獅帥君達の実情を知る度にやりきれなさと、何も出来ない自分に怒りが湧いて、それを繰り返すと物凄く疲れてしまう。