隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません
「……ありがとうございます。ダリオス様にそう言ってもらえて嬉しいです。でも、私たちは二人だったからこうしてダリオス様とも出会えたんです。双子でなかったら、どちらか片方だけだったら、きっと私はダリオス様と出会うこともありませんでした。こんなことを言うのは元ポリウスの聖女として間違っているのかもしれませんが……私はダリオス様と出会えて、レインダムに来れて、本当に幸せなんです。幸せだと感じてしまうことは、もしかしたらいけないことなのかもしれません。それでも、幸せだと思ってしまうんです」

 ポリウスが国として傾き結果レインダムの領地になったことも、ルシアがしたことも、ルシアがいずれ命を落とすであろうことも、全て辛く悲しいことには変わりない。セイラがレインダムへ来たことがそうなってしまったことの要因の一つだということもわかっている。わかっているからこそ、心が痛みで引き裂かれそうになる、それでもセイラはダリオスに出会えて幸せだと思えるのだ。

「セイラ……」

 幸せなのに悲しいと言わんばかりの顔で微笑むセイラに、ダリオスはいつの間にか手を伸ばしていた。セイラの頬にそっと手を添え、優しく撫でる。そして、セイラの額に自分の額をつけてそっと目を瞑った。

「俺も、セイラに出会えて本当に幸せだ。ポリウスから聖女を呼び寄せると聞いたとき、聖女について良い話はひとつも聞かなかったからどんな人間が来るのかと警戒していたんだ。でも、セイラが来て俺の人生は大きく変わった。左腕は治ったし、人を愛するという思いを知ることができた。本当に大切で、守りたい、一生一緒に生きていきたい相手ができたんだ。こんな気持ちになれたのは、セイラ、君だからだ」

 そう言って、ダリオスは静かにセイラの唇にキスをする。そして、顔を少し離してからセイラの瞳をジッと見つめ、優しく微笑んだ。その微笑みは、セイラの悲しく複雑な心を溶かしてしまうかのようなあたたかく蕩けるような微笑だ。

「セイラ、愛しているよ」
「……私も、愛しています。ダリオス様」

 セイラは目に涙を浮かべながら、とびきりの笑顔をダリオスに向ける。そんなセイラの言葉を聞いて、ダリオスはまた嬉しそうに微笑む。そして、ダリオスはまたセイラの唇に自分の唇を重ねた。

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