隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません



 ダリオスの部屋に着き、セイラが部屋の中に入ると、ダリオスはドアを閉じて鍵をかけた。そして、次の瞬間有無を言わさずセイラを抱きしめた。

「ダリオス様!?」

 セイラの問いかけに、ダリオスは抱きしめる力を強くする。しばらくの間ダリオスは無言でセイラを抱きしめていたが、ようやくセイラから体を離してセイラの顔を愛おしそうに見つめた。

(そんな、甘すぎる瞳で見つめられたら溶けてしまいそう)

 ダリオスの甘ったるい瞳にセイラが顔を真っ赤にすると、ダリオスはセイラへ頬を擦りよせ、そのままセイラの顔へ小さなキスをたくさん落としていく。それから、またセイラを抱きしめた。

「セイラが変わらず俺のそばにいることが本当に嬉しい。俺だって大丈夫だって信じていた。それでも、やっぱり心の奥底では不安だったんだろうな。こんなにホッとしているなんて……こうして、二人で屋敷に帰ってくることができて本当に良かった」

(ダリオス様……)

 セイラはダリオスの背中にそっと手を回すと、静かに優しくさすった。

「私も、ダリオス様とこうして一緒に帰ってこれて本当に嬉しいです」

 セイラがそう言うと、ダリオスは体をそっと離してふわりと優しく微笑む。そしてセイラの手を取ってベッドまで連れて行き、二人でベッドサイドへ腰掛けた。

「セイラがあの場で、俺と離れることになるならもう二度と聖女の力を使わないとはっきり言った時、正直驚いたんだ。前に、もしもそんなことがあるなら迷わずそうすると言っていたが、本当に実行してくれるなんて」

 セイラの両手を優しく握りしめ、ダリオスは思いを噛みしめるように言う。

「国王もアルバート殿下も許してくださったからよかったものの、本来聖女があんなことを言うなんて、それこそ本当にあり得ないことだ。それでも、勇気を出してセイラは言ってくれた。今の俺たちがあるのはそのおかげだよ。本当にありがとう」

 ダリオスがそう言って熱い眼差しを向けると、セイラは微笑みながら首を横に振った。

「私だけの力じゃありません。国王様やアルバート殿下が許してくださったからこそです。お二人は私たちのことをずっと見守ってきてくださいました。そんなお二人の許可があったからこそ、グレイヴス公爵たちも認めてくださったんだと思います」

 それに、とセイラはまっすぐにダリオスを見つめて微笑む。

「私が勇気を出せたのは、ダリオス様のおかげです。ダリオス様はいつでもどんな時でも、私のそばにいて励まし支えてくれました。今回だってそうです。それに、私はダリオス様とずっと一緒にいたい、そう思ったからこそ、臆することなく言えたんです。だから、ダリオス様のおかげでもあるんですよ」

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