隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません
 クレアが治癒魔法をかけたおかげで、牧師の目の下にあったクマは消え、顔色も良くなっている。牧師はセイラを見ると目を輝かせて安堵したように微笑んだ。

「ああ、聖女様、来てくださったんですね」
「街全体の浄化を行いました。……遅くなってしまい、申し訳ありません」
「聖女様のせいではありません。国に何度も浄化の嘆願を行ったのですが、何の音沙汰もなく、いつの間にかあんなことに……。噂で、いつも来てくださっていた聖女様が、隣国に売られたと聞いていたので心配していたのですが、こうして来てくださって本当にありがたいです」

(私のことを心配してくれていたのね……もし来るのが遅かったら、この街の人たちは正気を失って争い合い、全滅していたかもしれない)

 間に合って本当に良かった。セイラが牧師に微笑むと、牧師はセイラを見て優し気に目を細める。

「隣国に売られたと聞いて、もう二度と来てもらえないかと思っていました。隣国で何か酷い目にあっていないかと心配でしたが……いつもは目深にフードを被っていらしたあなたが、今はこうしてフードもかぶらず、凛としていきいきとしてらっしゃる。隣国でも幸せに暮らしてらっしゃるのですね。本当に良かった」

 微笑んでそう言う牧師の言葉に、セイラの胸はじんわりと熱くなっていた。牧師たちだってどれほど大変だっただろうか、それなのに、こうしてセイラのことを思ってくれているのだ。

「ありがとうございます。レインダムでは、本当に良くしていただいています。あの、こちらにいるハロルド卿たちのおかげで、私はこうしてまたポリウスに戻ってくることができました」

(夫です、と言うべきなのかもしれないけれど、なんだかまだ恥ずかしくて言えない)

 急に紹介されてダリオスは一瞬驚くが、すぐに牧師に向かってお辞儀をする。ダリオスの後ろで、クレアも微笑みながらお辞儀をした。すると、牧師は驚いた顔でダリオスを見つめる。


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