隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません
(体が、軽くなった?もしかして、腕輪にこめていた力のおかげ?)

「なんだか、力が少し戻った気がします」

 セイラが驚いて腕輪を見つめると、ダリオスは小さく頷いた。

「よかった。クレアの言った通りだったな。セイラが力をこめた腕輪なら、セイラが身につけた時に力がセイラに戻るかもしれないと言っていたんだ。ここで活躍できてよかったよ」

 ダリオスが嬉しそうにそう言うと、セイラの髪の毛を指で優しく梳いた。

「セイラ、次の場所まではまだ時間がかかる。力が少し戻ったとしても、まだ休んだ方が良いだろう。俺の膝を枕にして少し横になったらどうだ?」

(えっ?ダリオス様の、膝枕!?)

 ダリオスの言葉を聞いてセイラが驚くと、ダリオスは少し悲しげに自分の膝を見つめる。

「あぁ……でも俺のこの膝じゃ、ゴツゴツしすぎて痛いだろうか?……そうだ、馬車に備え付けられているブランケットをこうして」

 ブランケットを取り出すと、畳んで膝の上に置く。

「これで少しはよくなっただろう。さぁ、セイラ、遠慮なく膝に寝てくれ」
「えっ、そんな、えっ」

 セイラは動揺するが、ダリオスは変わらず微笑んで両手を広げている。早く来いと言わんばかりだ。

(ここで拒否するのもそれはそれで失礼よね。それに、確かにまだ少し頭がくらくらするから、横にはなりたい気もするし……)

「それじゃあ、失礼します……」

 おずおずとダリオスの膝へ頭を乗せると、思っていたよりも居心地は悪くない。セイラを見下ろしながら、ダリオスは優しくセイラの髪の毛を撫で始める。

(ダリオス様の手、とても気持ちが良い……)

 セイラはいつの間にか瞳を閉じて、そのまますやすやと寝入ってしまった。

「おやすみ、愛しいセイラ」

 そう言って、ダリオスはセイラが起きてしまわぬよう、静かに優しくセイラの額へキスを落とした。

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