隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません
 馬車のカーテンを開けると、窓の外には馬に乗ったクレアがいる。窓を少し開けて尋ねると、クレアは真剣な顔で口を開いた。

「前方に、ポリウス国の紋章が入った馬車が道を塞ぐようにして止まっています。その後ろにはポリウスの軍がおり、馬車の前にはセイラ様の妹君の姿が」
「……ルシアが!?」
「一体どういうつもりだ……?」

 セイラが驚いて声を上げると、ダリオスは顔をしかめて呟いた。

「どうなさいますか?」
「無理やり押し通るわけにもいかないだろう。近づいて、どうしてそこにいるのか聞くしかない」

 ダリオスがそう言うと、クレアは小さく頷いて馬を歩かせる。クレアの先導に続いて、馬車も動き出した。

(どうしてルシアがいるの……?まさか、私がレインダムへ帰るのを妨害しようとしている?)

 どこまでしつこいのだろう。王城で父親がダリオスたちに見逃してもらったことを忘れたのだろうか?セイラがダリオスに視線を向けると、ダリオスはそれに気付いて神妙な顔をした。

「セイラ、こんなことは言いたくないが、妹君はまだしつこくセイラを狙っているのかもしれない。手荒なことはしたくないが、妹君の出方によってはあまり良い対応はできないかもしれない。先に謝っておく」

 苦々しくそう言うダリオスに、セイラは胸が押しつぶされるような思いだ。

(王城でダリオス様たちの力を見ているはずなのに、どうして……ルシアの考えていることが全くわからないわ)

「ダリオス様が謝ることではありません。むしろ、私のほうこそ謝らなければ……ルシアが一体どういうつもりなのかわかりませんが、きっとまた失礼なことをしてしまうかもしれません」
「君が気にすることじゃないし、謝ることじゃない。むしろ、君の身に何か起こってしまうことの方が心配だ。絶対に、俺の側から離れないでくれ」

 ダリオスがそう言うと、セイラはしっかりと頷いた。その時、また馬車が停止した。

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