隣国へ売られた裏聖女は黒騎士様の病を治して国も繁栄させてしまったので、帰ってこいと言われてももう帰してもらえません



 王城から馬車で帰る途中、セイラは馬車の中でダリオスになぜかしっかりと体を密着させられ腰に手を回されて固定されていた。

(ダリオス様、どうしてこんなに密着してらっしゃるのかしら?隣に座ることはあっても、ここまでしっかりと腕を回されることは稀だわ)

 前に、道が悪くて危ないからとしっかり腕の中に抱えられていたことはある。だが、今回は道が悪いわけでもない。それなのに、まるで逃さないと言わんばかりの密着具合だ。

「あの、ダリオス様?」

 セイラがおずおずとダリオスを見上げ小さく声を出すと、ダリオスは真顔でセイラを見下ろした。

(どうしたのかしら?会議で疲れてしまわれた?)

「あの、道が悪いわけでもないのに、どうしてこんなに密着して座ってらっしゃるのですか?」

 セイラの問いかけに、ダリオスはムッとした顔をして口を開く。

「セイラはこうされていることが嫌なのか?」
「嫌ではありません。でも、こんな座り方をするのは珍しいなと思いまして……」

 不思議そうに首を傾げると、ダリオスは腰に回した手にグッと力を込めてから、小さくため息をついた。

「セイラ、君はアルバート殿下のことをどう思った?」
「どう、と言いますと?」
「そのままの意味だよ」

 ダリオスは何が聞きたいのだろうか?セイラはキョトンとしながらも、少し考える仕草をする。

「そう、ですね。アルバート様はとても真摯で誠実で、アレク様の振る舞いを気にかけてアレク様を陰でしっかりと支えていらっしゃる、そんな印象を受けました。王子として立派な、素敵な方だと思います」

 第一王子のアレクがなかなかに曲者で第一王子とは思えない振る舞いをしていた。そんなアレクを、アルバートは不満を口にすることもなく見捨てることもせず、律儀に対応していたのだ。きっと、人としてできた王子なのだろうとセイラは思い、微笑みを浮かべながらダリオスへ言う。すると、ダリオスはそんなセイラを見て苦しそうな表情を浮かべた。

「やっぱり、君もそう思うか。そうなんだ、アルバート殿下は本当によくできた方で……。いつもはもっと表情を崩すことなく、常に冷静だ。誰かに肩入れすることも、必要以上に誉めることもない。だが、セイラには表情を崩して、随分と誉めていた。きっとアルバート殿下は君のことを気に入っている」
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