恋を知った塩崎さんがなんか甘い。 〜アイドルだと思っていた推しは、感情ゼロのAIでした〜
涼しい風が窓から入る。
私は目を丸くした。
「宮瀬くんが、死んだ?」
「はい。三ヶ月前に」
宮瀬くんの芸能界引退話
そういえば、あの話の真相はわかっていない。
なぜ、芸能界を引退したのか。
YouTubeには大量の考察動画が上がっていたけど、どれも信憑性は低い。
目の前にいるのは宮瀬くんそっくりな人。
信じてみてもいいかもしれない。
「不慮の事故でした。信号無視の車に撥ねられたんです」
「な、なんと……」
これが本当なら、ニュースになってもおかしくないことなのに、なぜ小記事にすらならなかったのだろう。
「しかし、彼は昔から言っていたんです。『死んでもアイドルでいたい』と」
──だから、彼のクローンだった僕を宮瀬朔太朗そっくりに生まれ変わらせたのです。
は?
どういうことだ。
「もともと、金持ちの息子だった宮瀬がデビューしたのは15歳の頃でした。レッスンと勉強を両立させるのは不可能なので、クローン人間を生成し、それを学校へ行かせていたんです」
「それが塩崎さん?」
「まあ、はい」
なんか近未来の話みたいでごちゃごちゃになりそうだ。
私は必死で相槌を打つ。
「宮瀬の脳と僕の脳は共有されていたので」
便利な世の中になったものだ。
脳が共有されているっちゃどういうこった。
「そして、僕は学生として、彼はアイドルとして、二等分の人生を歩んできたのです」
理解できるようなできないような。
「僕も元は人の心を持ち合わせた普通の男子学生でした。しかし、ある時記憶と感情が消え失せたのです。その時、気づきました。『あ、宮瀬死んだんだな』と」
「でも、それなら塩崎さんが宮瀬くんの代わりをすればよかったじゃないですか」
彼は口を噤む。
そして静かな声で告げる。
「何度も試しました。しかし、彼の実力には到底及びませんでした。なぜなら、僕には感情がないからです」
「はい?」
「感情がないんです。僕の脳は人工知能──AIでできていますから」
やはり彼の声は淡々としていて、人の感情を感じられない。
「だから、僕と付き合って欲しいんです。むしろ、結婚しましょう」
「はあ?」
感情が荒ぶって叫び声をあげている。
どうしよう、なんだこの感情。
彼は肩に下げたバッグの中から何かを取り出す。
大きなふわふわした何か。
「Z世代女子に人気のキャラクターだと聞きました。『むむたん』っていうらしいです」
両手で大きなぬいぐるみを持つ彼。案外、さまになっている。
むむたん──女子大生を中心に人気に火がついた、うさぎか犬か猫かギリギリわからないラインのキャラ。
顔は正直可愛くない。
でも、それが「ぶさかわ」とか言って人気になったらしい。
何がいいんだ?これの。
「えっと……」
「お気に召しませんでしたか?」
「えっ……あ……」
なんといえばいいのかわからない。
ここで「はい。気に入りません」っていうのも失礼じゃないですか!?
「では、出直します。なので付き合いませんか?」
何だこの戯言は。
なぜ彼はここまで私に執着するんだ?
私は目を丸くした。
「宮瀬くんが、死んだ?」
「はい。三ヶ月前に」
宮瀬くんの芸能界引退話
そういえば、あの話の真相はわかっていない。
なぜ、芸能界を引退したのか。
YouTubeには大量の考察動画が上がっていたけど、どれも信憑性は低い。
目の前にいるのは宮瀬くんそっくりな人。
信じてみてもいいかもしれない。
「不慮の事故でした。信号無視の車に撥ねられたんです」
「な、なんと……」
これが本当なら、ニュースになってもおかしくないことなのに、なぜ小記事にすらならなかったのだろう。
「しかし、彼は昔から言っていたんです。『死んでもアイドルでいたい』と」
──だから、彼のクローンだった僕を宮瀬朔太朗そっくりに生まれ変わらせたのです。
は?
どういうことだ。
「もともと、金持ちの息子だった宮瀬がデビューしたのは15歳の頃でした。レッスンと勉強を両立させるのは不可能なので、クローン人間を生成し、それを学校へ行かせていたんです」
「それが塩崎さん?」
「まあ、はい」
なんか近未来の話みたいでごちゃごちゃになりそうだ。
私は必死で相槌を打つ。
「宮瀬の脳と僕の脳は共有されていたので」
便利な世の中になったものだ。
脳が共有されているっちゃどういうこった。
「そして、僕は学生として、彼はアイドルとして、二等分の人生を歩んできたのです」
理解できるようなできないような。
「僕も元は人の心を持ち合わせた普通の男子学生でした。しかし、ある時記憶と感情が消え失せたのです。その時、気づきました。『あ、宮瀬死んだんだな』と」
「でも、それなら塩崎さんが宮瀬くんの代わりをすればよかったじゃないですか」
彼は口を噤む。
そして静かな声で告げる。
「何度も試しました。しかし、彼の実力には到底及びませんでした。なぜなら、僕には感情がないからです」
「はい?」
「感情がないんです。僕の脳は人工知能──AIでできていますから」
やはり彼の声は淡々としていて、人の感情を感じられない。
「だから、僕と付き合って欲しいんです。むしろ、結婚しましょう」
「はあ?」
感情が荒ぶって叫び声をあげている。
どうしよう、なんだこの感情。
彼は肩に下げたバッグの中から何かを取り出す。
大きなふわふわした何か。
「Z世代女子に人気のキャラクターだと聞きました。『むむたん』っていうらしいです」
両手で大きなぬいぐるみを持つ彼。案外、さまになっている。
むむたん──女子大生を中心に人気に火がついた、うさぎか犬か猫かギリギリわからないラインのキャラ。
顔は正直可愛くない。
でも、それが「ぶさかわ」とか言って人気になったらしい。
何がいいんだ?これの。
「えっと……」
「お気に召しませんでしたか?」
「えっ……あ……」
なんといえばいいのかわからない。
ここで「はい。気に入りません」っていうのも失礼じゃないですか!?
「では、出直します。なので付き合いませんか?」
何だこの戯言は。
なぜ彼はここまで私に執着するんだ?