1度ならず2度までも君に恋をする
「それから書けなくなって、逃げてきて、もう二度と書かないつもりだった」


 独白を終えると、真紘くんは私の手を握る力を、ほんの少し強めた。その指先の微かな震えが、彼が一人で抱えてきた傷の深さを物語っていた。

 なんて声をかければいいか、凄く悩んだ。私だって同じ仕事をしている以上、彼が経験した事は決して他人事じゃない。

 だから私は、心にあるありのままの想いを言葉にした。


「…私は、好きだよ。真紘くんのコピー」


 私がぽつりと呟くと、彼は驚いたように私の手を離し、こちらを振り返った。


「…え?」

「私は好き、真紘くんの書く言葉が。繊細なのに力強くて、人の心に突き刺さるあのコピーが好き」


 そう熱烈に語りながらもう一度繰り返すと、彼は困惑したような眼差しで、私の目を真っ直ぐに見つめてきた。


「…何で俺のコピー知ってんの?見せた事無いよね」


 核心を突く彼の問いに、私は「あ」と声を漏らした。

 佐久間さんに内緒ねって言われたのを綺麗さっぱり忘れてた。
 ごめんなさい、佐久間さん。一緒に怒られてください。
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