1度ならず2度までも君に恋をする
「あ、れ?前見せてもらわなかったっけ?」


 苦し紛れに口にした言い訳を、真紘くんの視線が射抜く。それは怪しんでいるなんて生ぬるいものではなく、明確に私を疑い、答えを待っている目だった。

 沈黙が重く、肌にじっとりと冷や汗が滲む。


「仁菜?」

「ん!?」

「本当のこと言って」


 真っ向から問い詰められては、もう逃げ場なんてなかった。熱意が余ってこぼれ落ちた言葉のせいで、佐久間さんの協力までバラさなければならなくなった。

 真紘くんにも、佐久間さんにも、申し訳なさがこみ上げてくる。

 私はおとなしく白状することにした。


「…昼休みに、佐久間さんに聞いたの。今真紘くんがどんな案件を受けてるのかって。その時に、真紘くんがクライアントから指名されてるって教えてくれて…、その流れで、真紘くんの昔のコピーが見たくなって、資料室で探してた」

「…それで?」

「その時、佐久間さんが真紘くんの前の会社にいる同級生に連絡してくれて。…真紘くんがコピーを考えてた時の下書きが、まだ残ってたみたい。それを、FAXしてもらって、見ちゃった」


 白状すると、真紘くんは呆れたように軽くため息を吐いた。


「なんでそんなもんがまだ会社に残って…」

「それすらも重宝されるくらい、真紘くんは心に残るコピーを書いていたって証明にならないかな?」
 
「え?」

「普通、残されないよ。ただのコピーライターがボツにした案や、書きかけの工程なんて」


 誰かに必要とされる言葉を書くことも、没案や工程を書いたものが資料として引き継がれることも、真紘くんが紡いだものだからこそ価値があると証明されている様に感じた。
< 143 / 149 >

この作品をシェア

pagetop