1度ならず2度までも君に恋をする
Epilogue
 あれから完成したのが締め切り間近になってしまったものの、真紘くんが書き上げたコピーは無事に会議を通り、可決された。

 ようやく肩の荷が下り、オフィスのいつものデスクに深く腰掛け、真紘くんは眩しそうに窓の外を眺めていた。その横顔は、本当に憑き物が取れたような、晴れやかな表情をしていた。

 そんな彼を微笑ましく見守っていたかったけれど、あいにく私にそんな余裕はなかった。インフルエンザの猛威がようやく落ち着いてきたとはいえ、溜まりに溜まった案件を前に、自分のことで精一杯だった。

 けれど、この嵐のような忙しさも今月末には一段落する予定で、山を越えれば、ようやく彼とゆっくり過ごす時間が取れる。そんなことを心の支えにして、私はキーボードを叩き続けた。

 そしてその日の夜、久しぶりに真紘くんと駅まで一緒に帰ることになった。最近は私の残業が多すぎて別々に帰るのが当たり前になっていたから、並んで歩けるだけで、浮足が立った。


「やっと、落ち着いたね!」

「仁菜はまだでしょ」

「あともう少しなの」


 私が気合を入れ直すと、真紘くんは「はいはい」とあやすように少しだけ笑った。

 仕事が落ち着いたら、有休を取って旅行に行くのもいいかもしれない。さすがに二人で同時に休みを取ったら社内で怪しまれるから、彼と一緒に行くのは難しいかもしれないけれど、いっそ夏帆ちゃんのところに遊びに行くのもいいな、なんて私はぼんやりとこれからの予定を膨らませていた。
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